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去りゆく影を抱きしめよ

カテゴリー: プレイ日記

 プレイ日記です。以下のクエストのネタバレが含まれています。

・Canvas The Castle



 私は毎日哀しみの中で目覚める。砂に水が染み込むように、愛する人の思い出が手から零れ落ちていく。私は波打ち際の岩のようにここに残り、毎日少しずつすり減っていく。だがそれでも私はずっとここにいて、彼の人の面影が薄れていくのを見つめているのだ。
 今しばしとどまれ、影よ。まだ貴方を行かせる心の用意はできていない。もう少し、きちんとした別れの挨拶ができるまで。これは酷な頼みではないはずだ……。

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 身分不相応もいいところだけど、ぼくは今、Chorrol城を訪問している。もっとも、城主にしてChorrol女伯のArriana Valga伯爵夫人は気品はあっても飾らない人柄だし、城も謁見の間までは公に開放されているので、朝から夕方までの間であれば誰でも城を訪ねて伯爵夫人に会うことはできる。普段の薄汚れた鎧は脱いで、それなりにまともに見える服装で行った効果もあってか、ぼくも何ら見咎められることもなく、夫人に謁見できた。
 そして少しの談笑の後、夫人は少し声を潜め、一つの依頼を持ちかけてきた。できれば城内の人間には頼みたくないことだというのだ。
 狙い通り、というべきだろうか。ぼくが城を訪ねたのは、街中である噂を聞いていたからだったのだ。

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 Dar=Maに聞いた、伯爵夫人の『非常に個人的な何か』とは、夫人本人によれば故人である彼女の夫、Valga伯爵の肖像画だという。数日前の夜、彼女の寝室から無くなったというのだ。犯人を見つけ、画を取り返してほしいというのが夫人の依頼だった。
「あの画の他に、我が背の君を偲ぶよすがになるものはもう残っていないの。私はその生命のない絵の具とキャンバスが語りかけてくれるのではないかという空しい希望を抱いて、幾夜も孤独な夜を過ごしてきました」
「何か手がかりはありますか?」
「城住まいの者と話すのが最善の道でしょう。知り得ることをすべて知ったならば、おのずから真実も見えてくるのではないでしょうか」
 内部の人間の犯行を疑っているのか……。確かにこれは、城内の人間には任せたくないよね。
「絵が盗まれたとき、私は部屋を外していたのです。しかし部屋には鍵がかけられていました。そのとき部屋に立ち入ることができた者で所在がわかっていないのは宮廷魔術師のChanelと、ポーターのOrgnolfの二人です。後は、衛兵隊長のBittneldと給仕のOrok gro-Ghoth、式部官Laythe Wavrickにも話を聞くとよいでしょう」

 そんな訳で早速聞き込み開始。Wavrick式部官が都合よく謁見の間で執務中だったのでまずは彼から話を聞いてみることにした。
「ここだけの話ですが、最近のOrgnolfの様子が少し妙だったかも知れません。酒量が近頃とみに多くなっています。彼は酒を買うために、他人に金の無心をするようになりました。人足の賃金では酒代を賄えなくなっているようですね」

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 ……のっけから危険な話題全開といったところか。普通に考えたら酒代欲しさに主人の宝物に手を出すなんて無茶苦茶もいいところだが、酒飲みの行動は時として常識を超越するのも事実。疑われる理由は十分にあるというところ。
 とはいえこれだけで彼を犯人と決め付けることもできない。何より証拠が何もないし。
 などと考えながら顔を上げると、当のOrgnolf本人とばっちり目があってしまった。ちょうど謁見の間に荷物を運んできた所らしい。
「それで? 俺に何か言うことがあるのか? それとも彫像みてえにそこに突っ立ってる以外能がねえのかい?」
 うわ、Wavrick式部官との話を聞かれたかな。だとしたらちょっとまずいか……などととっさに思ったが、事件当夜の状況を聞くとあっさりと答えてくれた。
「盗みがあった夜なら俺は大広間にいたよ。Bravilからきた配達人と口論をしててな。大雨でBravilからの荷を積んでた馬が足を滑らせて、荷物の瓶をほとんど割っちまったんだ。奴は自分の責任じゃないと訴えたが、俺はそいつを首にしたよ」

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 あーあ。有り金はたいて買った酒の瓶がほとんど割れちゃったらそりゃ困るだろうし腹も立つだろうけど……なんだかなあ。
「その後はずっと部屋で過ごしてたぜ……読書をしてたな」
 読書ねえ。どうせArgonianの侍女が槍の手入れをする話なんじゃないの?
「で、伯爵夫人は絵を捜すのにあんたを雇ったって訳か。まぁ、こんなところで俺なんかをぽかんと眺めてる奴に見つけられるとは思えんがな」
「……まあ、努力するよ。ところで、その画を見たことはある?」
「ああ、あるぜ。偉大な男の見事な肖像だった」
 なるほどね。

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「申し訳ないが、私はその夜は城にはいなかった。夜番だったのでChorrolを巡回していたんだ」
 次に話を聞いたのは、衛兵隊長のBittneld。
「他に変わった事と言えば……最近Chanelがしばしば西の塔に篭っている事くらいだな。何をやっているのか聞いたら、呪文の研究中だと言っていた。その時はそれで納得したんだが」
 これはChanel女史に話を聞くべきかなあ。

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 城に戻り、使用人の居住区画に行くと、Chanelは彼女の私室にいた。
「伯爵の画が盗まれたことは聞いています。伯爵夫人が調査の為に外部の者を雇うとは思いませんでしたけど。貴女の調査がうまくいくことを願っています」
 宮廷魔術師のChanelは情熱的な印象のRedGuardの女性。まだここ、Chorrolの支部しか知らないからあまり知ったようなことは言えないけれど、ギルドの魔術師達とはかなり異なる印象を受ける。まあ、主な役割が占術の結果を元に為政者……この場合は伯爵夫人だ……の助言役を務めることだから、自分の研究にしか興味がないようなタイプでは勤まらないのも確かだ。
「絵が画まれた夜は、私は城の中庭で星を詠んでいました」
 まあ、普通の行動ではある。
「しばらくして星を詠みおわると。大広間を抜けて食堂に行きました。その後は寝る時間まで、食堂でワインを飲みながら、作ったホロスコープを調べていました。それからまっすぐ部屋に戻って、その夜は寝てしまいました」
 ……一点引っかかることがあるんだけどな。まあ、もう少し裏を取ったほうがいいか。
「問題の画は見たことがありますか?」
「ええ、でもあの画は到底伯爵の真の姿を正しく描き出しているとは言えないものでした」
 ……え?
「彼の人の高潔さと思いやりの深さを、画布の上に正確に描き出すことは至難の業なの。いいえ、誰にもそんなことはできはしない……」

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 何だろう。彼女の肖像画に対する思い入れはどこか普通とは異なるものを感じる。伯爵が亡くなり、夫人が後を襲うまでは彼女は伯爵に宮廷魔術師として仕えていたのだろうから、実は彼女が伯爵に……というそれこそ絵に描いたようなゴシップも、彼女の態度を見た後では十分ありそうな気がする。でもまだ、それだけでも無いような……。

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 伯爵夫人が上げた関係者で最後に残った給仕のOrok gro-Ghothは、その名が示す通りのOrcだった。
「Reynald Jemaneを知ってるか? 最近奴をCheydinhalで見かけたんで声をかけたんだが、あの野郎め、他人の振りをしやがった。あんまり腹が立ったんでそれ以来あいつとは口をきいてない」
 ……君もか。
 最近Chorrolの街中でよく噂になっているのが彼、Reynald Jemaneだ。話の内容は誰の口から聞いても概ね一致していて、彼をCheydinhalで見かけたので声をかけたが、まるで知らない人間に話し掛けられたような対応をされたというのだ。
 でも今聞きたいのはそのことじゃなくてさ……。
「だがもしかしたら、あいつにも何か事情があったのかもしれんと最近思えてきて……ええと、その話じゃなくて盗まれた画の事が聞きたいのか?」
 だからそう言ってるじゃないか。
「うーむ、俺はその晩は、ChanelもOrgnolfもまったく見た憶えがないな。というのも、俺はその夜はほとんど部屋にいたんだ。ずっと雨で日課の散歩に行くこともできなかった」
 おや。これは裏づけが取れたかな。
「大雨で荷馬が荷をひっくり返して、積荷の瓶をがほとんど割れてしまったとOrgnolfが言ってたけど」
「その話は知らないが、そんなことがあっても不思議じゃないくらいの雨だったのは確かだな。Orgnolfと言えば、その数日前にあいつが西の塔の上階で酒を飲んでるの見たぜ。止めないなら伯爵夫人に言いつけるって言ったら、あいつは散々不平をたれてくれたけど、最後は納得してくれたよ」

 Orgnolfもgro-Ghothも画が盗まれた夜はかなりの大雨だったと証言している。となると誰が嘘をついてるのかは明白だ。数ヶ所を回っていくつかの証拠を見つけ、最後にChanelを訪ねると、彼女は部屋を外していた。

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 机の上に無造作に置かれているのは木製の画材入れ。中には使われた形跡も明らかな絵の具や筆、パレットなどが収められている。
 小さく溜息をついて顔を上げると、戻ってきたChanelが部屋の入口に立って、哀しそうな瞳でぼくを見ていた。

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「……肖像画を描いたのは、君だったんだね」
「ええ。伯爵が亡くなられた後、夫人は画を片時も離そうとはしなくなりました。それで私は、次第に彼女に嫉妬するようになったのです。どうしても画を取り返さなければならないと思った。それで、画を盗んで別の絵の裏に隠そうとしたのよ」

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 西の塔の下層には、Chorrolの聖堂を描いた大きな風景画がイーゼルに架けられたままの状態で置かれていた。その画の裏に肖像画を隠すつもりだったのだと彼女は言う。絵を描いているところを他人に見られる訳にはいかなかったので、魔法の研究を口実に西の塔に篭り、ずっと絵を描いてきたというのだ。
「でももう、それも終わりね。私も今では自分の罪を恥じているけど、この後の運命に向き合う覚悟はできているわ」
「最後に、一つだけ教えてくれないかな」
 ぼくは言った。
「君が肖像画の作者だということを、伯爵夫人は知っていたんだろうか」
「それは……」

 結局。
 ぼくは伯爵夫人にChanelを告発できなかった。

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 彼女の話でも、肖像画の作者がChanelだと伯爵夫人が知っているかどうかははっきりとはわからないということだった。しかしChanelを肖像画盗難の犯人として告発すれば、たとえそれまで知らなかったとしても、間違いなくその時点で作者が誰かは知れ渡ることになる。
 そしてChanelの秘めた想いは公然のものとなり、伯爵夫人は自分以外の女性の、伯爵への愛情の証を目の当たりにしながらこれからの夜を過ごすことになるのだ。それで誰が幸せになれるというのだろう……。
 ぼくにその選択はできなかった。いや、正直に言おう。単にぼく自身の怖ろしい想像から逃げ出したのだ。
 でも、間違ったことをしたとは思っていない。



 いまや画は喪われた。彼の人の面影は最早私の胸の内にとどまるものだけで、それもまた少しずつ薄れ、やがては消えてゆく。いつか再びあの画を見ることを願いつつ、それがおそらく叶わぬ望みであろう事を私は知っていた。そう、彼の人が甦ってくることと同じように。
 だがいつか、そう遠くない日に私が彼の人のもとに行く時のことを思えば、それも決して哀しむべきだけのことではないのかも知れない。

 いまや物語は終わる。いまこそ言葉は尽きる。
 いまこそ、影よ、去りたまえ。
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