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愛はさだめ、さだめは死

カテゴリー: プレイ日記

 プレイ日記です。以下のMODクエストのネタバレが含まれています。

クエストMOD『Knights Of The White Stallion』より
・Black Bow Collection
・Captain of the Knight



30-01.jpg

「何が砦だよ……」
 Topal Bayの岸に建つBlack Keep、Black Bow Bandits最後の拠点を目の当たりにしてぼくは毒づいた。
「長期の攻囲にも余裕で持ちこたえそうな、完全な戦闘用の城塞じゃないか」
 四隅に円塔を備え、分厚い城壁をめぐらし、城門を頑強なゲイトハウスで固めたその姿には、見るだけで人を圧倒する迫力があった。
「どう攻める?」
「ちょっと待って」
 Mazogaを制し、仔細に様子を観察する。
(塔にも城壁上にも守備兵がいないな。それに門も開かれている。予想はしていたが、やはりこれだけの城で十分な防備を配置できるだけの人数は残っていないということか)
 これなら予定通り最初の計画でいけそうだ。ぼくはバックパックを下ろすと、中から何本かのポーション壜を取り出した。二~三本を立て続けに一気飲みする。魔力増強の効果が現れてきたところで小さく呪文を唱えた。発動寸前の状態になったところで構呪の進行を一時停止させ、次の呪文の準備にかかる。
 一つ、二つ、三つ……。
「これを飲んで」
 準備が終わったところで壜の一本をMazogaに差し出した。
「何だこれは」
「透明化ポーションだよ。これを飲んだ状態で奴らの目をかいくぐって城門から侵入する。下手に積極的な行動をとると透明化が破れるから、ぼくがいいというまでは攻撃に出ないようにね」
「……わかった。私から強引についてきた事だし、指示には従おう」
 また何時になく素直なことだ。
 これからとる行動の予定を彼女に伝えると、ぼくは再びバックパックを背負い、透明化ポーションを飲み干した。
「じゃあ、行こうか。なるべく足音は立てないで」
 歩き出そうとしたところでふと視界が曇った。景色が見る見る白くぼやけていく。
「気をつけて。霧の中だと音が良く通る」
 Mazogaに囁き、歩を進めた。都合よく湧き出した海霧に紛れて城門を潜り抜け、城の中庭に達する。まだぼくらの存在に気づかれた様子はなく、周囲では散在する焚火やテントの周りで数人の山賊たちが立哨したり暇をもてあましたりしていた。Mazogaが彼らの輪の外に出た頃を見計らって、ぼくは庭の中央で準備しておいた呪文を一気に解き放つ。
「出でよ、我が僕たち……!!」
 Daedroth、Clanfear、Skelton Chanpion、それにFlame、Frostの両Atoronachが一気に出現する。

30-02.jpg

 山賊たちはパニックに陥った。てんでに武器を抜き、中庭のまん中に突如出現した召喚生物たちに攻撃をかけようとする。彼らの注意が完全に庭の中心に向いたところで、透明なまま彼らの背後に回っていたMazogaが攻撃をかけた。混乱が更に広がる中、ぼくも混戦の輪を抜けて彼らの背後に回る。誤って味方を誤射せぬよう注意を払いつつ、矢を何本か山賊たちの背に射込むと、今度こそ彼らの士気は完全に崩壊した。逃げ惑う山賊たちをほぼ掃討し終えたところでぼくはMazogaを制し、最後の一人二人を故意に見逃した。生き残った賊が、救援を求めて城の正面大扉を開ける。
「……突入!!」
 城内に逃げ込もうとした生き残りを背後から切り捨て、ぼくらは城のメインホールに雪崩れ込んだ。中にいた山賊たちが、ぼくらを迎え撃とうと足を踏み出し……。
「Mazoga、タイミングを合わせて。少し下がるよ!!」
 足を止め、後退するそぶりを見せたぼくらに釣り出されるように前進しようとした山賊たちの前に、強引な連続構呪で召喚生物の群れを再び呼び出す。山賊たちが勢いを殺しきれずに群れの中に突っ込み、瞬く間にホールは阿鼻叫喚の巷と化した。

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 力尽き、あるいは時間切れで消滅する召喚生物達を追加で再召喚し、常に混戦状態を維持しながらぼく達は城内を掃討していった。鍛冶場……最早使用されず荒れ果てていたが……から居住棟へと制圧区域を広げていくと残存の山賊たちは後退し、残った地下区画に立て籠もろうとする動きを見せる。
「守りを固められると少々厄介だな」
「なら、その前に突き崩す。少しだけあいつらの気を引いておいて」
 尽きかけた魔力を最後に残ったポーションで強引に穴埋めし、ぼくは再び連続召喚でDaedrothとFrost Atoronachを召喚した。前衛を彼らとMazogaに任せると、これも最後の透明化ポーションを飲み干して姿を消す。そして山賊たちが正面の敵に気を取られている間にDaedrothの背を駆け登り、彼らの頭上を飛び越えて背後に降り立った。少々派手な音を立ててしまったが、戦闘の騒音に紛れた事と、何より正面の敵に対応するのに手一杯のため、山賊たちに気づかれた様子はない。ぼくは残った魔力を解放し、前衛に投入した連中に比べると攻撃力と打たれ強さは譲るが、より速度と手数に勝るSkelton ChanpionとClanfearを召喚した。呼び出された召喚生物たちが山賊たちを背後から奇襲する。
 その瞬間、彼らの最後の防衛線は崩壊した。

 潰走する山賊たちの後を追って、ぼくらは地下牢に突入した。生き残った僅かな山賊たちも、最早組織的な抵抗を試みることもなくあっという間に討ち果たされる。ほぼ片づいたか、と思った瞬間、最後に残っていたDaedrothが派手に吹き飛ばされ、そのまま消滅した。
 行き止まりになった通路の中央に、筋骨隆々とした上半身を曝し、漆黒の肌のOrcimerとおぼしき人影が仁王立ちしている。たった今、強烈な一撃を放ったばかりであるはずのそいつは、一分の隙も見せない身ごなしのままぼくの方を向いて手にした戦斧を構えた。あんな重そうな武器を力任せに振り回しても隙を見せないとはね。
 これは、手強い……。再召喚を行うだけの魔力の余裕は無いし、そもそもそんな隙を見せたらその瞬間に真っ二つにされてしまいかねない。だからと言って直接相手をして勝てるか……?!
 ぼくの一瞬の逡巡を目ざとく見抜いたか、その瞬間Orcimerの強烈な一撃が飛んできた。咄嗟に剣を上げるが、相手の力を完全に受け流すことができずにバランスを崩す。まずい、こうなったら……。
 右手の剣の構えを立て直しながら追い撃ちの一撃を今度は盾で受け止めるが、不完全な受けに左手が痺れる。盾が叩き落され、派手な音を立てて手の届かないところに吹き飛んでいった。剣を構えつつ構えを半身に変え、盾を失った左手をこっそり背後に回してミゼリコルドの柄を掴み……。

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 その瞬間、Mazogaが飛び込んできて斬撃を放った。だが相手は強烈な一撃を受け流し、素早く体勢を立て直す。反撃に放たれた重い戦斧の一撃がMazogaを襲うが、これは彼女の盾にがっちりと阻まれた。そのまま二人は激しく斬り結ぶ。形勢は互角、いや、僅かにMazogaが押されているか……? やはり並大抵の使い手ではない。だがさすがに向こうもMazogaの相手をするのが精一杯で、こちらにはほとんど注意を向ける余裕は無さそうだった。
 これほどの相手にこんな卑怯な手は使いたくないが……。
(……すまない)
 心の中で詫びると、ぼくは慎重に狙いを定め、相手の顔面に向けて火箭を放った。大した威力の呪文ではないが、戦斧を振りかぶった瞬間に目の前を炎に塞がれ、一瞬Orcimerの動きが止まる。その隙を見逃さず、Mazogaは一気に勝負を決めた。

「……やはり私が同行してよかっただろう」
 倒れた相手に短く黙祷を捧げながら、振り向かずにMazogaがいう。
「そうでもないさ」
「珍しいな、お前が負け惜しみを口にするなど」
 本当はぼく一人でも、何とかする手が無かった訳でもない、が……。
「……そうかもね」
 あまり誉められたものではない手を使わずにすんだのも確かだ。
「それにしても……これはどういうことだ……?」
 周囲を見渡したMazogaが不審そうな声を上げた。
「確かに、死体が多すぎるね」
 応じて答える。
「どうやら、ぼく達が突入する前に既に攻め込まれて一戦やらかしていたみたいだな。明らかにBlack Bow Banditsとは装備が異なる連中がいる」
「Rockmilk Caveと同じということか」
 更に捜索を続けるうちに、ぼくらは若い女性の遺体を発見した。身分を示すようなものは何も持ってはいなかったが、明らかに山賊の一味とは異なる身なりをしていた。何しろ、武器や防具の類をまったく身につけていなかったのだ。
「これは……公女殿下と一緒に行方不明になったという侍女か?」
「そのようだね」
 ぼくは短く答えた。
「これ以上ここでわかることは無さそうだ。行こう」
 ぼくはきびすを返して歩き出した。Mazogaが何か言いたそうにしながら後に続く。その気配を背後に感じながら、ぼくは彼女が、ある事に気づかずにいてくれと祈った。
 侍女の遺体の傍で死んでいたBlack Bow Banditsと思われる賊の死体……彼は彼女を襲っていたのではなく、彼女を守ろうとして死んでいたように見えたのだ。

「ここが最後、か」
 主郭一階の中心部、謁見の間、もしくはそれに類する部屋のものであると思われる施錠された巨大な扉の前に立ち、ぼくは誰にとも無く呟いた。
「……行くよ」
 Mazogaに一声かけると、ぼくはさっきの漆黒の肌のOrcimerから奪った鍵を鍵穴に差し込み、回した。かちり、と鍵と錠が噛みあう感触が手に伝わり、掛け金が解除される。力を込めて押すと、扉は重々しい音とともにゆっくりと部屋の中に向けて開いていった。
 そこはやはり元は謁見の間だったと思われる広間だった。明かりの数は少なめだが、物が見て取れないほどではない。部屋の両側には上に上がる広い階段があり、そこから始まる回廊が部屋の半分をぐるりと取り囲んでいる。その回廊上にちらちらと窺える人影は、護衛の弓箭兵だろうか。
 そして正面の玉座には、黒いフードを被り、ぼく達と同じ白馬騎士の鎧を身につけた男が腰を下ろし、鋭い視線でぼく達を見据えていた。

30-05.jpg

「Gafgarian The Black!!」
 フードの男が立ち上がり、同時に周囲の手勢たちが戦闘態勢を取る……その機先を制してぼくは叫んだ。いきなり名を呼ばれ、フードの男の動きが一瞬止まる。
「Esmeralda公女を返して貰いに来た! 公女は何処だ?!」
 Gafgarianの表情が一瞬歪んだように見えたが、彼はそのまま無言で武器を構えなおす。
(……やはり手遅れだったか)
 前に出ようとするMazogaを制してぼくは口を開いた。
「君は……あの護衛達の相手をしてくれ」
「しかし……」
 Mazogaが抗弁しようとしたが、ぼくはその言葉を待たずに襲いかかってきたGafgarianを迎え撃つべく床を蹴った。

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 ……何故ぼくは、まだ、生きているのだろうな。
 力の抜けた指先から剣を取り落とし、体重を壁に預けてずるずるとへたり込みながら、なんとなくそんなことを考えていた。他の敵を一掃したMazogaが慌ててこちらに駆け寄ってくる。ぼくはのろのろと重い腕を上げて、血相を変えてぼくを起こそうとする彼女を押し留めた。
「……大丈夫、多少手ひどくやられたけど生命に別状は無いよ」
 まだ少し残っている魔力で、傷口に治癒呪文をかけて出血を止めていく。
「これでよし、と……。後は少し時間をくれれば、また動けるようになる」
「一体どういう……」
 憤然として口を開きかけたMazogaを、ぼくは再度制した。
「話は後にしよう。まずEsmeralda公女の安否を確認しないと」

 傷口が塞がるのを待って包帯を巻くと、ぼくらは捜索を再開した。程なく、二階の奥の部屋で目的のものを発見する。粗末なベッドの上に横たわる女性の死体。その指には身分を示すLeyawiin伯爵家の紋章入り指輪。既に薄々覚悟はしていたことだが、Esmeralda公女はこの古びた城塞の奥で、帰らぬ人となっていた。
(頼む、どうか、Gafgarian様とEsmeralda姫の事を……)
 Brugoの最期の言葉が脳裏に甦る。一瞬、眩暈のように足元が揺らぎ、ぼくは咄嗟にベッドの支柱で身体を支えた。
(Brugo、すまない。やっぱり君の最期の願いはかなえられなかった……)
 そして彼女の側には、一冊の手記が置かれていた。Black Bow Banditsの真の首領、元Leyawiinの騎士団長Gafgarian The Blackの、苦悩に満ちた告解書が。

 事の発端は、彼とEsmeralda公女との関係がMarius殿に発覚し、交際を禁じられたことにあった。Marius殿はそれだけではなく、彼をLeyawiinから追放したのだという。そして彼の部下達、更に副官のBrugoまでもが彼に従いLeyawiinへの忠誠を放棄したこと、Marius殿が彼らを叛逆者として追討の命を下したことが、事態を決定的にした。Leyawiinと彼ら追放された騎士達との闘争が続く中、彼らを無法の徒に追いやったLeyawiinへの憎悪や、あるいは戦力を補うために本物の野盗や山賊達を仲間に引き入れられた事により、彼らは真実、Leyawiinに仇なす凶賊の集団に変貌していったのだ。
 だがEsmeralda公女は、その後もGafgarianとの秘められた逢瀬を続けていた。告解書には、彼女がここを訪れたのは決して今回が初めてではなく、以前から度々この城砦に忍んで来ていた事が記されていた。もちろん彼女一人でこんなことが可能であるはずもない。Black Bow Banditsの側だけではなく、Leyawiin城内にも彼女の侍女をはじめ有力な協力者が存在したことはまず間違いが無かった。
 そしてとうとう破滅の時がやってきた。Brugoの死によりBlack Bow Banditsの戦力が弱体化したことを受け、この本拠地までもMarauderの集団が攻め寄せてきたのだ。彼らはBlack Bow Bandits達の防備を破って城内にまでも侵入し……乱戦の中、Esmeralda公女は侍女共々殺害されてしまった。そしてすべてを喪ったGafgarianは、絶望の中最後の戦いに臨んだのだ。

 ぼくらはLeyawiinに戻り、Marius殿に経緯を報告すると公女の印章指輪とGafgarianの告解書を渡した。
「御苦労だった、騎士殿」

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 そう呟くとMarius殿は少し一人にして欲しいと言い残して謁見の間を去っていった。
「……すべてが片づいた訳ではないにしても、取りあえずはこれで終わったね」
 一人ごちたぼくにMazogaが怒りの表情を露にした。
「何が終わったというんだ。こんな結末など……」
「たとえそれがどんな結末であったとしても、終わりは終わりだよ……。どう幕を引くかを選ぶことくらいはできるにしても」
 ぼくの言葉にMazogaは抗弁を取りやめ、真剣な表情で問いかけた。
「それで、お前はどんな幕引きを考えているんだ?」
「とりあえずEsmeralda公女とGafgarian殿の遺体を回収しよう。他の騎士達にも協力してもらってね」
「しかし……公女殿下はともかくGafgarian殿は……」
 表情を曇らせるMazogaに、ぼくは人の悪い笑みで応じた。
「Black Bow Banditsの首領はあくまでBrugoだ。そしてMarius殿はあの手記を受け取った。読まずともある程度は内容の想像はついたろう。それで何も言わなかったんだ、Marius殿もこちらの考えた幕引きを呑むだろうさ」
 Mazogaが呆れたようにぼくを見つめた。
「つくづく怖ろしい事を考える奴だな、お前は」
「だからついてくるなと言ったんだよ」
 ぼくの言葉にMazogaは気まずげに目をそらした。
「それじゃ君は先に騎士館に戻って、準備を進めておいてくれないか。ぼくはもうひとつ回っておく場所があるから」
「だったら私も……」
 口を開きかけたMazogaを、ぼくは断固として押し留める。
「絶対に駄目だ」
 口調から何かを感じたのか、さしもの彼女もそれ以上何も言わなかった。

「Esmeralda姫がGafgarian殿と密会するのを助けていたのは君だね、Alessia」
 Leyawiin城内。目的の人物を見つけ出したぼくは周囲に人がいないことを確認するとそう切り出した。
「随分と不躾ですね。まあ貴女の非礼は昔からでしたから、今更咎めようとも思いませんが」
 Alessia Caro伯爵夫人はぼくを不快そうに睨みつけてそう答えた。

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「軽率な行動だったとでもいいたいのですか?」
「否定はしないんだね」
「その必要があるとは思いませんから」
 昂然と顔を上げて彼女は言い放つ。
「わたくしはただ、少しでも大切な家族の手助けがしたかっただけです。家族の幸せを願うことがいけないなどとは誰にも言わせません」
 ……貴族の名家にあっては、状況次第では家族ほど恐ろしい敵は無い。そのことは嫌というほど知っているはずだろう、と言いかけてぼくはその言葉を飲み込んだ。他にもいろいろ浮かんできたいくつもの科白をすべて封じ込め、ぼくは一言だけ言った。
「そうだね。三年前、ぼくと君とは『友人』だった。……そしてぼくがTheklaと逃げる手助けをしてくれたのも君だったね」
「何を言いたいのです?」
 それは問いではなく確認だった。だからぼくは答える。
「今更何も言う必要は無いことは、お互いわかっているはずだよ。Gafgarian殿は何も言わずに逝った。だったらぼくも、今更余計なことを囀るつもりはないさ」
 Alessiaはしばらく黙ったままぼくを見つめると、目をそらさないまま口を開いた。
「それで、貴女はわたくしに何を望むのです?」
「君の望んだとおり、この物語にせめて現時点で望みうる限りの幸せな幕引きを。悪い話ではないはずだよ」
 Alessiaは薄く微笑って言った。
「なら、好きになさい。どうせわたくしが何を言おうとも、そのつもりなのでしょう?」
 ぼくは黙って彼女に一礼すると、その場を立ち去った。

 数日後、Esmeralda公女の葬儀がしめやかに執り行なわれた。前の騎士団長Gafgarian The Blackは、Leyawiinを追放された後も忠節を失わず、Black Bow Banditsに拉致された公女を救出すべく単身彼らに戦いを挑み、壮烈な討ち死にを遂げたとされ、同日に公式な葬儀と、名誉の回復が成された。
 Gafgarian亡き後の騎士団長の位は、この一連の事件において大いに功績のあった騎士、OrcのMazogaが継ぐものとされ、ぼくは彼女を補佐する副長の一人に任命された。

 葬儀の日の夕刻、ぼくとMazogaはTelepeから密かに引き上げておいたBrugoの亡骸を、騎士館の裏手に葬った。Gafgarianの名誉を護るため自ら表に立って辣腕を振るっていた彼の名は……それこそ正に彼の望んだことだったのだが……Black Bow Banditsの首領として知れ渡っており、さすがにその事実を糊塗することは不可能だったのだ。
 もちろん墓にも名を記すことはできず、ただイニシャルを刻むに留めざるをえなかった。

『高潔なるOrcimerのB.B.ここに眠る。彼は真の騎士であった』

「いい加減訳を話してくれてもいい頃だと思うが?」
 墓碑銘を刻み、騎士館へ戻る道すがらMazogaが口を開いた。
「お前はこの一件について何を知っている。何故一人でGafgarianに挑むような真似をした」
「『知っている』ことはさほどないよ。ほとんどはただの推測に過ぎない」
 前にもこんなことを言ったことがあるな、と思いつつぼくは答える。
「確かにぼくは、ぼくの推測が事実からそう離れてはいないだろうとは思っているけれど、そのことの裏付けを取りたいとは思わないね」
「私もそんな事を聞くつもりは無い」
 Mazogaが応じた。
「裏の事情がどうあれ、お前の動機には関係が無いだろう。お前にとって、この事件は一体なんだったんだ」
「……必ずしも関係が無い訳じゃないんだ」
 答えて、天を仰いだ。
「この件がこんなことになった原因の一端はおそらくぼくにもある。すべてではないにせよね」
「Brugoを討ったことか? だがそれなら私も同罪だろう」
「いや、そのことじゃない」
 言って、その先の言葉に詰まった。一体何をどこまで話したものか迷ったのだ。
 その時、心の内に囁く悪魔の声があった。いっそ何もかも話してしまえ、Mazogaなら他に漏らすことは決してないだろうし聞いて苦しむのは彼女の勝手だ、と。

「こんな話を聞いたことはない?」
 声の抑揚を殺し、ぼくは淡々と話し始めた。
「ある時、王に仕える有能な将軍が謀反の罪で告発され主君の前に引き出された。将軍は自分に叛意が無いことを強く訴え、無実を主張した。それに対して王はこう答えた。『叛意のある無しは問題ではない、謀反を起こしうるだけの能力を持っていることがお前の罪なのだ』と」
「Gafgarian殿がLeyawiinを追われたのは、それが理由だと?」
 同意しがたい、というようにMazogaが問うた。
「いや、Marius殿はそこまで単純でも狭量でもないと思うよ。姫とGafgarian殿の恋は彼にとってはむしろ好都合だったはずだ。配下に有能な武人がおり、謀反も怖いが粛清もしたくないという場合、婚姻を通じて一族の中に取り込んでしまうというのは古来から何度も繰り返された有効な手段だ。だからGafgarian殿とEsmeralda公女の関係が最初から禁じられた物だったとはぼくは思わない。それどころか伯爵家のほうでこっそりお膳立てした可能性すらあるとぼくは思う。もちろん、周囲の余計な介入や工作を防ぐためにも、彼らの関係は最後の瞬間まで秘匿されることになっていたんだろうけどね。
 だが、恐らくAlessiaが嫁いで来たことで状況は一変した。ChorrolのArriana Valga伯爵夫人にはAlessia以外に子供はおらず、亡き伯爵を未だに愛する彼女には、再婚の意思も無い。この状態のままMarius殿とAlessiaの間に世継ぎが産まれれば……一人でChorrolとLeyawiinの両方を襲爵するのは不可能だとしても、男子を二人設ければ一人にChorrolを、もう一人にLeyawiinを継がせる事くらいは可能だろう。
 しかしGafgarian殿とEsmeralda姫が結ばれ、彼が伯爵家の一族に名を連ねるとなるとこの計算は成り立たなくなる。彼らの間に男子が生まれようものなら、Leyawiin伯の爵位はその子供に与えられ、Alessiaの子はChorrolのみを受け継ぐことになる可能性が高い。それどころか伯爵家の安全を第一に考えるなら、AlessiaがChorrolに帰される事態すらあり得るかも知れない。
 それでも事が表向きだけでも穏便に収まればまだましな方だ。皇族や大貴族の家中に二つの血統が並び立てば、大抵の場合内紛の火種にしかならない。かくしてGafgarian殿とEsmeralda姫の関係は、一気にLeyawiin伯爵家内の容認しえぬ危険要素となった訳だ。後は……言うまでもないだろう。
 だから……この一件はある意味ぼくのせいでもあるんだ。ぼくがAlessiaをLeyawiin伯妃にしてしまったんだ」
 Mazogaが唖然としてぼくの横顔を見つめた。話がどうつながるのか想像もつかないのだろう。

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「ぼくの家が、貴族や騎士身分ではないものの、それなりに名を知られた郷士の家だったって言うのは前に話したよね。郷士階級の家庭では、上流階級への伝手やそれなりの教育を受けさせる事を目当てに、貴族の家に子供を使用人として出仕させるなんて事が結構行われていて、うちもその例外ではなかった。まあ普通なら爵位なしの騎士家に数年奉公するくらいのものだけれど。だけどぼくに来た話はそんな常識を無視したとんでもないものだった。どういう経緯なのかその時はまったくわからなかったが、帝室が皇孫女の付き人にぼくを求めているというんだ。もちろん、ただの郷士であるぼくの家に拒否なんてできる訳はなく、ぼくは貴族でもないのに皇宮に出仕することになった。
 もっとも、帝都についてみると一応ぼくなんかが選ばれたそれなりの理由はあった。ぼくが仕える事になったのは第三皇子Ebel殿下の庶出の娘、Thekla姫だったのだけれど、本当ならもう孫がいてもおかしくない年齢の皇子殿下三方が未だ誰一人正嫡の御子を設けられていなかった関係で、彼女と彼女の母親の皇宮内での立場は極めて微妙なものだった。リスクの高さと、それに見合う見返りがまったく無いという事情を考えれば、貴族達が全員自分の娘を彼女に仕えさせる事を拒否したのも無理は無い。実際ぼくも、散々な目に遭う破目になったのだけれど、なんとか最後にはTheklaの信頼を得ることに成功した。その後は何とか平和な日々を送れるようになったのだけれど、それもそう長くは続かなかった。
 ある時、彼女に……Theklaに望んでもいない縁談が持ち上がった。そのお相手が、誰あろうMarius殿だったわけだ。そこでぼくは一計を案じて、ChorrolのAlessia Valga公女に密かに接触を図った。彼女がLeyawiin伯爵夫人の座を狙っているらしいという話は、噂で聞いていたからね。Alessiaが首尾よくLeyawiin伯妃の座を射止めればTheklaの縁談は破談になる。だったら彼女とは手が組めるかもしれない……浅はかにもそう考えたんだ。
 彼女は確かにやってのけた。関係者の名誉は誰も傷つかないやりかたでMarius殿とTheklaの縁談を無かったことにし、自分が未来のLeyawiin伯妃の座に収まったんだ。でもその方法は……Theklaに、他の『帝室に取って都合のいい』相手をあてがう事だったのさ。ぼくが事に気づいたときにはとっくの昔に婚約も完了し、それどころか式の日取りまでが間近に迫っていた。
 どうしようもなく追いつめられて、ぼくはTheklaを連れて逃げた。もちろん逃げ切れるはずは無かったし、最初からそんなことを望んでもいなかった。本当はぼくは、そのとき彼女と二人で死ぬつもりだったんだ。二人で毒を仰いだけれど、ぼくは死ぬことができなかった。数ヶ月後に目覚めた時ぼくが知ったのは、ぼく一人だけが生き残ったという事実だった」

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 Mazogaが何かを言おうとした。だが言葉にならなかった。ぼくは冷静に続けた。
「ぼくは絶体絶命の危地にあった。何しろやった事が事だ、その時にはぼくの家族も、地上からすっかり消し去られていた。もちろんぼく自身、本当なら生かしておいてもらえるはずも無かったが、ぼくはその時、公式には家族ともども既に死んだことになっていた。そういう人間にはいろいろと使い道があるものでね。結局ぼくはBladesと取引され、彼らの手先としてMorrowindに送り込まれることになった。Bladesの刺客として如何なる手段を用いてもMorrowind情勢を帝国に都合の良いものに導く、その為の工作に従事すること。それがぼくの生命の代価だった。ぼくはその取引を呑んだ」
「どうして……」
「どうして、だって?」
 ぼくは口元だけを歪めて嗤った。
「生きるか死ぬか、二つに一つだったんだ。Bladesの刺客に成り下がって生きるか、拒否して帝都監獄の永世牢に朽ち果てるか。ぼくは生に未練があったのさ。死にたくなかった、それだけだ」
「……すまない」
「君が謝ることはないさ」
「だが……」
 苦悩の表情でMazogaは言葉を絞り出した。
「これは私などが聞いていい話じゃなかった。まさかお前が、そんな目に遭っていたなんて……」

 Mazogaが去った後、ぼくは騎士館前のNiben Bayの暗い水面を見つめ、さっきMazogaにいえなかった言葉を一人心の中で呟いた。
(その時点では……ぼく自身はまだ、どんな目にも遭ってはいなかったんだよ)

30-11.jpg
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天気輪

URL | [ 編集 ] 2012/03/16(金) 00:18:12

おひさです。
最近ではRP系ブログもめっきり減ってしまったので更新が嬉しい限りです。
レヤウィンの小競り合いからルウェイン嬢の過去にまで話が発展するとは・・・モロウィンドでブレイズの仕事してたというと嫌な予感しかしないのですが・・・(wktk)
カロ婦人がちょっと複雑な立場な人なのは知ってましたが、貴族こええええ

あまね

URL | [ 編集 ] 2012/04/07(土) 22:05:31

天気輪様

 すみません! いつの間にかコメント設定が承認制になっていたのに気づかず、今までコメントいただいていたのに気づいていませんでした(大汗)。

>モロウィンドでブレイズの仕事してたというと嫌な予感しかしないのですが

 あ、ルウェリンは両親が誰かもはっきりしてますし、病気耐性もないですし、ちゃんと歳もとりますからNで始まる名前の人じゃないですよ、一応(^^;;

>貴族こええええ

 このあたりは捏造てんこ盛りもいい所ですが、Alessia夫人は作中でも書いたとおりChorrol唯一の跡継ぎなのに他の都市領主の所に嫁に来ているとか、MOD追加キャラとはいえEsmeralda公女はどう考えても年齢的にAlessia夫人の娘ではありえないとか、そもそもMarius殿が初婚とは思えない(早めに跡継ぎを作るのは領主の義務)とかこのあたりの不自然さを何とかカバーしようと裏事情を考えていったらこんな話になってしまいました(爆)。
 とはいえOcatoもJauffreも、よくうちの娘を生かしたままにしているよな……という気はします(苦笑)。











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