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舞い落ちる姫君

カテゴリー: プレイ日記

 プレイ日記です。以下のMODクエストのネタバレが含まれています。

クエストMOD『Knights Of The White Stallion』より
・Black Bow Collection
・Captain of the Knight



29-01.jpg

 炎熱の大気が揺らいでいる。
 そこは、Niben Bayの岸に位置する港市であった。
 くすんだ木造の構築がごたごたと積み上げられ、通りは建物の落とす影の底に沈む谷底のようであった。その底から見上げる空だけは嘘のように鮮烈な色合いで、目に痛いほどだ。
 通りを行きかう人々は誰もが汗ばみ、声をはりあげ、せわしげに歩いていた。だが、建物の屋根や張り出しを繋ぎ、迷路のように街区を結んでいる歩廊の入り組んだ奥に、重苦しい海上の凪のように、空気の静止した一画がある。人の往来もあまりなく、建物の影が黒く切り抜かれたように落ちている、奥まった通路の行き当たりだ。
 そこは不健康な匂いがした。
 生活の貧しさや清潔の欠乏からの汚濁ではない、もっと陰湿な穢れが、その暗がりには満ちているようであった。
 二人の黒衣の男が、通路の入口に立って、奥を眺めた。
 饐えた汚水の臭気に混じって、何か甘ったるい匂いが流れている。黒衣の男達はそれが何であるかを知っていた。一人が吐き出すように言った。
「はきだめだ!!」
 もう一人が肯いて、僧衣の頭巾を目深に下げた。背後を振り返って、あたりに人の気配が無いことを確かめる。相方の男が気乗りしない声で、また言った。
「本当にこんな場所にいるのかな」
 もう一人の男は黙ったまま通路に足を踏み入れた。気のない相棒も仕方なく後に続く。
 その〈店〉を預かる主人は貧相な顔の帝国人で、Septim金貨一枚で彼らに〈客〉の居場所を教えた。薄暗い不潔な屋内は入り組んでいて、奥に進むほどあの甘ったるい匂いが強くなった。
「あちらです」
 帝国人が指し示した。
 仕上げも塗装もしていないでこぼこの板壁がむき出しになった汚い広間に、粗末な板の仕切りだけの寝床が並んでいる。泥まじりの藁を敷いて〈客〉たちが横たわっていた。まるで病者のように。
 Skoomaの匂いで、室内は胸が悪くなるようであった。
 二人の男は、室内の寝台の間を腰をかがめて歩き回った。市内と同じように、あまたの人種がそこには見分けられた。緑色の肌のOrc、帝国人、北方人、Morrowindから来た青みを帯びた黒灰色の肌のDunmer。そして……。
 黒衣の男の一人が燭台を出して火を灯した。寝台の列の一番はずれに、彼は灯りを掲げて近づいていった。
 そこには一個の人間の残骸があった。
 骸骨のように痩せ細った身体を襤褸につつみ、土気色の顔には生気が無い。半ば開いた目は虚ろで焦点を失っていた。Skoomaにおぼれた末に人が堕ちゆく姿そのままに、その少女にはもう、意志も感情も残ってはいなかった。
 黒衣の男達は顔を見合わせた。
「信じられん、まさか、こんな奴が……」
「まるで廃人だな」
 呟くようにもう一人が言って、燭台を床に置いた。
「しかし我々の仕事は閣下の元に彼女を運ぶことだ。後は、閣下に任せよう」
 二人の男は、正体をなくしたその骸骨のような人間を両わきから抱え、店の外に連れ出した。狭く急な階段を下って地上にたどり着くと、一人が鋭く指笛を鳴らす。路地の入口に、先刻から待機していたらしい馬車が走りこんできて滑らかに止まった。
 この地方では、あまり見かけない箱型の馬車だった。長い旅程を示す土埃がうっすらと膜を作った車体には、その持ち主を示すいかなる紋章も、記号も記されてはいない。車室の内部もまた、窓を覆うカーテンに遮られて伺い知ることはできなかった。
 黒衣の二人は少女を馬車に抱え入れ、すばやく扉を閉めると御者に合図をやった。
 真夏の光と影が静止したままじっと動かぬような天穹の下にうずくまるくすんだ木造の街を、一人の少女を誘拐した秘密な馬車は、何処へとも知れず駆け去っていった。



 それからしばらくは、騎士団の組織作りに忙殺される日々が続いた。

 各都市が自衛と治安維持のための都市衛兵隊の所有と維持を認められているのは、彼らが極めて限定された兵站能力しか持ち合わせておらず、他の都市や、まして帝都へと行軍し、これを攻略するような能力を持ち合わせていないからだ。そのことを知悉していたBrugoは、衛兵隊の行動限界を僅かに超えた地点にBlack Bow Banditsの拠点の多くを設置し、ゲリラ戦による襲撃を繰り返していた。Brugo亡き後、彼らの行動は最早組織的な通商破壊戦ではなく、単なる山賊の襲撃に変質しつつあったが、未だLeyawiinの経済に対する深刻な脅威であることに変わりはない。
 この状況を打破するためには、討伐部隊の行動限界を伸ばす必要がある。補給を担当する部隊を編成して同行させるのが最も簡単な解だが、補給段列の同行は部隊の機動性を劇的なまでに悪化させるのが常であり、それだけ機動力に勝る山賊たちを捕捉する事が困難になることを意味していた。更に山賊たちが機動性の優位を生かして後方に回り込み、補給段列を攻撃して兵站と後方連絡線を断つ挙に出た場合、後背を遮断されて孤立した軍は戦わずして後退に追い込まれるか、最悪の場合は崩壊する可能性すらあった。
 とはいえ、本格的な兵站能力を騎士団に持たせる事が最初から考えの外であったのも事実だ。騎士団に必要とされるのはあくまで部隊の機動性を損なわない範囲での限定された兵站支援能力であり、しかも容易に拡張が行えないものでなければならなかった。間違ってもBravilや帝都まで軍を行軍させる能力を持たせる訳には行かないのだ。そこでぼくが行ったのは、騎士達に仕える従士(Squier)達を後方支援部隊として再訓練し、補給段列としての能力を持たせることだった。
 部隊の再訓練に一定の目処がついた時点で、騎士団は活動を開始した。再びTelepeを……今度は騎士団総がかりで……襲撃する。様子を見に来るであろうBlack Bow Banditsの残党達を何名か捕らえるためだ。彼らを尋問し、Telepe以外の拠点の位置を割り出した。そして、少しずつ討伐行の足を伸ばしながら彼らの拠点を一つずつ攻略する。作戦は順調に進み、さほどの時を経ずしてBlack Bow Banditsの拠点は一つを残してほぼ無力化されるに至った。

29-02.jpg

 最後に残った、Black Bow Bandits最大の拠点がここ、Rockmilk Caveと呼ばれる洞窟だった。

 洞窟内に侵入すると、鍛えられた鋼同士がぶつかり合う音が響いた。既に戦闘が開始されているのだ。目を凝らすと、奥の洞窟が広がったところで人影らしきものが激しく動いている様子も見て取れる。

29-03.jpg

「……どういうことだ?」
「襲撃を受けているようだね。しばらく様子を見よう」
 小声で騎士たちを制し、しばらく状況を静観する。さほどの時を経ず前方の戦闘は終息したようだった。遠目に僅かな生き残りが肩で息をしている様が見える。こちらの存在に気づいた様子はない。
「じゃあ行こうか……かかれ!!」
 不意を討たれた賊は、ほとんど抵抗もできずに一瞬で制圧された。周囲を警戒しつつ『戦場』の様子を探ると、そこかしこに戦死した賊の死体が転がっているのが見て取れる。一群はおなじみの黒弓を装備したBlack Bow Banditsの山賊たちだが、それとほぼ同数の、雑多な装備を身につけたより重装備の一団が同じく死体となってそこここに転がっていた。
「Marauderの一隊がBlack Bow Banditsを襲撃しているようだな……Brugoが斃れた事で抑えが利かなくなったか」
 Mazogaが独り言のように呟いた。
「元から敵対していた可能性も高いけどね。もっとも彼がいなくなった事でBlack Bow Bandits側の防戦能力がかなり落ちたであろう事は否めないけど」
 ぼくは囁き返した。
「何にせよ、好機であることには変わりはない。このまま一気に掃討しよう」
 ぼくらはそのまま奥に進んだ。やはり洞窟内の要所要所で激しい戦闘が生起しており、そこに更にぼくらが介入し、戦闘中のBanditとMarauderを奇襲制圧する形で掃討は進んだ。一ヶ所、防御柵まで設けた堅固な防御陣地ではBlack Bow Banditsが襲撃を撃退して防衛線を保持していたが、繰り返された襲撃に既にかなり消耗していたのか、騎士団の攻撃に持ちこたえるだけの力は残していなかった。

29-04.jpg

 洞窟最奥部。
 巨大な吹き抜け状の空間にはテントまで立ち並び、一大野営地の様を成していたが、既にここでも激しい戦闘が繰り広げられていた。本陣まで攻め入られているようでは、陥落は免れえまい。
「既にどちらの側も戦力半壊状態だな……一気に片をつけたほうがいいか」
 物陰から状況を確認し、ぼくは判断した。
「……突撃!!」

29-05.jpg

 騎士団は突撃した。交戦中だったBanditとMarauderがこちらに気づいて慌てて戦力を振り向けようとするが、それが更なる混乱を生む。三つ巴の乱戦は、激しいが短い戦闘の後、騎士団の一方的な勝利に終わった。

29-06.jpg

 翌朝、ぼくとMazogaはLeyawiin城に登城した。Marius殿に拝謁し、Black Bow Banditsの最後の主要な拠点を掃討し終えたことを報告するためだ。この一件に関ってしまったせいで随分Leyawiinに長居する破目になってしまったが、そろそろ旅を再開する頃合だ。Rockmilk Caveを掃討し終えたことでBlack Bow Banditsも概ね無力化できた事だし、これでMarius殿に暇乞いをしても、断られるような事はないだろう。そう、思ったのだ。

 もちろん、そんな甘い目論見は通るはずもなかった。

「素晴しい。この忌まわしき弓が増えるたびにかの賊共は力を失っていくのだ。諸君の目覚しい貢献には応えねばなるまい」
「いえ、騎士としての務めを果たしただけですので……」
 報告を受け、喜色もあらわにぼくらを称揚してみせるMarius殿にMazogaが答えた。何と言うか律儀なまでの模範的回答ではある。下手にMarius殿に内心を見せてしまうと後々厄介事に巻き込まれかねないので正しい対応ではあるのだが、彼女の場合判ってやっているのかどうか。
「貴殿は真に騎士道の鑑だな、Mazoga卿。だがなればこそ、その働きに正しく報いねば主君としての器も問われようというものだ。それにこのような場合、形式を守る事も騎士の務めというものだよ。ここは一つ、素直に報償を受けてはもらえないだろうか」
 そう言ってMarius殿は傍らに控える式部官に合図をする。持ってこられたのは柄元に白馬の意匠が彫られた長剣だった。また、これに加えてぼくとMazogaの乗騎となる白馬も与えられるが、こちらは騎士館の厩舎に直接届けられるとのことだ。
「では、今後もより一層Leyawiinのために尽くされよ」
 そう言うとMarius殿は自ら剣をまずMazogaに、続いてぼくに手渡した。
(やれやれ、これでまたしばらくはここに留まらなきゃならないなあ……)
 内心で溜め息をつきながら剣を受け取ると、妙な違和感を指先に感じた。何か封印された書簡のようなものが鞘の下面に添えられているような……。

29-07.jpg

(……?!)
 悟られないように顔を上げてMarius殿に視線を向けると、Marius殿は他言無用とばかりにごく僅かに表情を顰める。やられた……。
 表沙汰にできない、内密の厄介事らしきものを押しつけられ、憮然とした表情を表に出さないように気をつけながら、Mazogaとともに退去しようとしたところで、改めてMarius殿がぼく達二人に声をかける。
「では……宜しく頼む、騎士たちよ」
 それは、普段の彼からは想像もつかない自信を欠いた弱々しい声で、ぼくは振り返ってMarius殿の表情を確かめたいという衝動を何とか押さえ込んだ。

「それで、伯爵からは何と?」
 城を退去したとたんにMazogaが聞いてきた。やはりぼくとMarius殿の様子にしっかり気づいていたらしい。
「ここじゃまずい……多分。どこか人目につかないところを捜そう」

29-08.jpg

 結局、メイジギルドの部屋を一つ貸してもらい、扉に鍵をかけてからぼくは書簡の封を破った。ひとしきり目を通すとMazogaに手渡す。
 そこに書かれていたのは伯爵の娘、すなわちLeyawiin公女であるEsmeralda姫が何者かに誘拐されたらしいという事実だった。彼女が侍女たちと共に散策に出かけ、岸辺を歩いている姿を目撃されたのを最後に姿を消してから、既に数ヶ月になるという。
 Marius殿は既に彼女の無事については諦めてしまったのか、失踪の経緯は今更知りたくないが、せめてどのような運命を辿ったのかが分かる何かだけでも見つけ出してほしいと心情を吐露していた。そしてこれはきっと、Black Bow Banditsの仕業であるに違いない、とも。
 騎士団の活動により彼らの拠点はほぼ壊滅状態だが、後ひとつ有力な拠点が残っていることがわかった。公女は恐らく、そのBlack Keepと呼ばれる古い砦に連れ去られたものと思われる。砦を制圧し、真実を明らかにしてほしい。書簡はそう、締めくくられていた。

「筋が通らないな……いや、ピースが全然足りないだけかもしれないが、それにしてもこれでは」
 いろいろとわからないことが多すぎる。そもそもBlack Bow Banditsは、Brugoは何のために彼女を拐かしたのか、彼らから伯爵に何らかの要求は無かったのか、あるいは要求に応えても戻ってこなかったのか……。
 更にBrugoの最期の言葉の事もある。Alessiaがこの件にどの程度絡んでいるかは現状ではまったく不明だが、もし彼女の思惑が多少なりとも介在しているとすれば、どう転んでも碌な事態にはなりそうもない。
(参ったね、どうも……これは最悪の事態を想定して動くしかないか)
 ぼくが腹を決めるのと、Mazogaがぼくに話しかけてきたのがほぼ同時だった。
「砦を陥とさねばならないとなると、人手も機材も必要だな」
「そうだね、君は一度騎士館に戻って騎士達を集めてくれないか。ぼくは先行して状況を偵察しておくよ。集結地点を決めてそこで落ち合おう」
 バックパックから地図を取り出し、集結予定地点に印を付けてMazogaに手渡した。
「それじゃ、後のことはよろしく頼むよ」
 Mazogaが戸惑いながらも首肯するのを確認すると、ぼくはきびすを返す。そのまま南に向けて歩き出そうとしたところで、背後から肩をつかまれた。
 ……不審を抱かれる様な行動をとった覚えはないんだけどな。
「……どういうつもりだ?」
 押し殺した声が後ろから尋ねる。
「何の事?」
 ふり向かずに聞き返す。
「お前が、この件を自分一人で片付けようとしていることだよ」
 沈黙が落ちた。

「……あのさあ」
 掴まれたままの肩を竦める訳にもいかないので、ぼくは小さく溜め息をついて見せる。
「ぼくが勝てる勝負しかしないことは知ってるよね」
 わざとらしくならないように聞き返す。
「……まあな」
「普通、城だの砦だのは防御側の十倍以上の戦力と、攻城機材がなければそうそう陥とせるものじゃないって事も承知の上だよね。そもそも騎士館に戻って頭数をそろえようと言い出したのは君なんだから」
「もちろん」
「じゃあ何でぼくが、一人でBlack Bow Banditsの砦を落とし、残党を一掃しようとしてるなんて結論になるんだよ。普通に考えてできるわけないだろ」
「私にわかるのは、お前がこの件に私や騎士団を関わらせたくないと思っているということだ」
 肩から手を離し、Mazogaはあっさりと言った。
「そして一度本気になれば、ありとあらゆる手段を駆使して普通なら通らない無理を押し通しかねないのがお前という奴だ。お前がどうやって一人でBlack Bow Banditsを叩き潰すつもりなのかは私にもわからん。だがお前が今、本気だということははっきりとわかる。だったら……私にはわからなくとも、もう既に勝算は立っているんじゃないのか?」
「人を何だと思ってるんだよ」
「じゃあ、勝算はないのか?」
「いや、まあ……」
 今のぼくの気分なみにどんよりと重苦しい空を仰ぎ、ぼくは不承不承認めた。
「無い訳じゃない」
「なら決まりだな。行こう」
「待ちなって」
 ぼくを追い越し、さっさと南に向けて歩き出したMazogaを、ぼくはあわてて引き止めた。
「あそこまで言ってくれたんだから、この事も理解してくれているはずだと思うんだけど……」
 Mazogaを正面から見据えてぼくは言った。
「ぼくの勝算に君は入っていないんだよ」
「なら計算をやり直すんだな」
 突き放すような言い方にも動じず、Mazogaはあっさりと言い返してきた。
「誤解を招くような言い方をしたのは悪かったと思ってるよ。でも君に後に残ってほしいのは、決して君や騎士達を巻き込みたくないなんていう身勝手で独善的な理由からじゃない。後始末の事を考えると、信頼できる味方でかつこの件に明確に関わっていない人間を残しておきたいんだ」
 何とか彼女を翻意させようと説得を試みる。
「君が残ってくれないと、打てる手が一つ減ってしまうんだよ」
「それは私も考えなかった訳じゃない。だが私が残っても、さほど有効な保険にはならんと思うぞ。それに、今更こんな事を持ち出すのは気が引けるが……あの時私にBrugoの相手をしろといったのはお前だろう。だったら、奴が何をしようとしていたのか、奴が私たちに希んだことは何だったのか、確かめずに終わる訳には行かない。お願いだから、最後までつきあわせてくれないか」
 ぼくは天を仰いだ。それを持ち出されたら、これ以上抗弁のしようがない。
「最悪の場合、騎士の身分を失うこともありうるよ。いや、それどころかLeyawiinに近づくことすらできなくなるかもしれない」
 それでも何とか、無駄と知りつつ最後の抵抗を試みる。いくら騎士身分が彼女にとって代えることのできない拠り所だと言ってもその為に自分を曲げるような相手ではないことは十分わかっていたが、それでも一縷の望みをかけたのだ。
「そうなったとしたら、それは私が使えるべき主君の器を見誤っっていたというだけの事だ。意に沿わぬ相手に仕えるくらいなら、地獄の底までお前につきあうさ」
 まあ、やはり無駄だったが。
「わかった。そこまで言うならこれ以上は何も言わない。行こう」
 溜め息をついて南に歩き出したところで、Mazogaがまた口を開いた。普段から必要最小限の事以上は滅多に言わない彼女にしては珍しいこともあるものだ。
「つきあう以上これだけは教えてくれ。お前は何をそんなに怖れているんだ。この件について一体何を知っている?」
「Esmeralda公女は御歳二十歳だそうだ」
 ぼくの答えにMazogaは戸惑った風に問い返してきた。
「それで?」
「Alessiaはぼくと同い年なんだよね。つまり十九歳。もちろんMarius殿はこれが初婚という訳じゃない」
「Esmeralda公女は先の公爵夫人の娘ということか。だがそれだけでは……」
「もちろん、いくつかとても不愉快な想像はできるけど、現時点では確かなことは何もわからない」
 ぼくはMazogaの言葉を肯定した。
「だからこそ、これから行く先で知るべきではないことを知ってしまうんじゃないかという可能性をぼくは怖れているんだ……」
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