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終着駅

カテゴリー: プレイ日記

 プレイ日記です。以下のクエストのネタバレが含まれています。

・A Brotherhood Betrayed


「ねえ、Llewellyn」
「ごめん、無理」
 ぼくは即答した。みるみるJeanneの表情が見事なふくれっ面に変わる。
「そんな顔しても駄目。Arnoraの件みたいな目に遭うのは一度だけで十分だよ」
 Jeanneは更にふくれた。上目遣いでぼくの顔をじっと見つめる。
「話くらい聞いてくれてもいいじゃない」
「……聞いた後でも断ることができるならね」
「そうねえ」
 Jeanneは少し考え込んだ。
「平気で断っちゃえる人ならいくらでもいると思うわ。でもLlewellynには無理ね、聞いてしまえば断れないと思う」
 そう言ってJeanneはにっこりと微笑う。
「だからお願い聞いて?」
「やだ」
 既に負け戦は確定しているが、最後の悪あがきをしていると横から助け舟が現れた。
「なあ、Jeanne。あんまりLlewellynを困らせるもんじゃないぜ」
「貴方は口を挟まないで、Volanaro」
 助け舟、一瞬で轟沈。
 ぼくはJeanneに気づかれないよう、口の中で小さくつぶやく。
「……わぉ」

「Raynil Dralastっていう名前は知ってる?」
「名前だけならね」
 Volanaroが撃沈されてしまったので、という訳でもないがぼくは結局Jeanneの話を聞くことにした。まさか一日中漫才をして過ごす訳にも行かない。普段のJeanneが相手ならそれはそれで楽しそうな気もするけど……少なくとも『今日のJeanne』が相手ではその気になれない。
「街に着いたときに衛兵から聞いたよ。確かヴァンパイアハンターなんだって?」
 吸血病、という病気がある。接触感染型の、つまり比較的感染力の弱い伝染病なのだが、その症状はきわめて性質が悪い。
 まず、日光に極端に弱くなる。症状が進むと陽の光を浴びただけで全身が焼け爛れて死亡するほどだという。更に血液に対する異常な渇望に取り憑かれる。この渇望は人としての理性すら蝕むほどで、結果この病気の患者は他の人間を襲って血を啜ろうとするようになる。犠牲者は多くの場合失血死にいたるが、生きながらえた場合はかなりの確率でこの病気に感染し、今度は自分が新たな犠牲者を捜し求める様になる。
 そして……一番の問題として、未だ確実な治療法は見つかっていない。
 かくしてこの病に罹患した患者は、人を襲って生血を啜る怪物……吸血鬼として狩り立てられることとなる。嫌な話だが『理性を喪失して他人を襲うようになり、治療不能』という病気の特性から、吸血病罹患者は感染が発覚した時点で人権を失い、退治されるべき『怪物』にされてしまうのだ。その吸血鬼『退治』を生業とするのが、ヴァンパイアハンターと呼ばれる者たちだった。
「ええ。そのRaynilがこの街の住人、Bradon Lirrianを殺害したのよ」
「殺害って……Vampireでもないのに?!」
 ぼくは驚いて問い返す。
「RaynilはBradonがVampireだったと主張しているわ」
「……つまり君は違うと思ってるって事?」

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「彼はとても感じのいい人だったわ。Vampireだなんて信じられない。むしろ……Raynilの方から嫌な感じを受けたの」
 ぼくは天井を仰いだ。
「君の人を見る目は確かだと思うけど、さすがにそれだけで事をひっくり返す訳にはいかないだろう。それに、Bradonが感染したのがごく最近……君が最後に彼に会った後なのかも知れないじゃないか」
「もちろんその可能性はあるわ」
 Jeanneはあっさりと認めた。
「でも納得していないのは、彼の奥さんも同じよ。それなのに衛兵達は『高名なヴァンパイアハンター』の言うことだけを頭から信じ込んで、彼女の必死の訴えには耳も貸そうとはしない」
 なるほどね。彼女の不機嫌の理由はそれか。
 ……今朝からギルドに漂っていた、異常なまでの緊張感の謎がようやく解けた。なにしろあのJeanneが、隠しようのない怒りのオーラを発散し続けていたのだ。表面上の快活さはいつも通りだったが、それがかえって彼女の怒りの深さを表しているようで、他のギルドメンバーは全員胃が痛くなりそうな思いを味わっていた。朝食後、Selenaは早々に調剤室に閉じこもってしまい、J'skarに至っては例のごとく『姿を消して』しまった程だ。結局、逃げ道を見つけられずに取り残された二人、つまりぼくとVolanaroが彼女の相手をする破目になったという訳だ。
「……了解、期待に沿えるかどうかはわからないけど、何かできることはないか調べてみるよ。まずはBradonさんの家に行けばいい?」
 だからそんな安堵の表情でぼくを見るんじゃないよ、Volanaro……。気持ちはわかるけどさ。

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 Jeanneに教えてもらった家は、Arnoraの家のほど近くにあった。扉を開けると、現場検証の最中だったのだろうか、真っ先にBruma市衛兵のサーコートの黄色が目に飛び込んできた。

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 そのうちの一人……どうも彼が捜査の指揮をとる立場にあるらしい……が、慌ててぼくのところにやってきた。
「申し訳ありませんが市民、まだ捜査中なのでこの家は立ち入り禁止です。我々と、Raynil Dralas氏以外は」
 Carius Runelliusと名乗った衛兵隊長がぼくに向かってそう言った。まあ、普通はそう言われるだろう。
 問答無用で叩き出されても文句は言えない所だが、部下に応対を任せてしまっても問題のないところを彼はわざわざ自分から説明に来てくれた。誠実さにつけ込むようでいささか気が引けるが、ここはあと少し粘らせてもらおう。
「ぼくはメイジギルドの者です。Vampire患者が出たとなるとギルドとしても無関係は決め込めないのでここに来たのですが……それに、事件はもう、概ね解決したと聞きましたよ」
「メイジギルドの? ということはJeanneさんが……しかし、彼女は……」
 Cariusは少し考え込んだ。
「衛兵隊と支部長の間にいささか見解の相違があったことは聞いています。ですがわれわれの望むことも、あなた方と同じで真実を明らかにすることです。支部長も、少し冷静になってもう一度考え直したいということで、かわりにぼくをよこしたんですよ。それに、あと少しすればどの道事実はすべて明らかにせざるを得ないでしょう? でなければRaynil氏に殺人の嫌疑がかかってしまいますし」
 我ながらよくこんな嘘八百を並べられるものだとは思ったが、Cariusはぼくの言うことを信じてくれたようだった。
「わかりました。確かに何が起きたのかくらいならお話しても特に害はないでしょう。貴方の言うとおり、結局はBruma中に事実を公表しなければならないことですし」

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 そう言ってCariusが話してくれた事件の経緯は、おおよそ次のようなものだった。
 先週、城壁の外にある墓場で隠されていた死体が二つ発見された。その死体の首には、鋭い牙によるものと思われる二つの穴が開いていた。被害者はこの街の物乞いで、Cariusによれば、彼らならば行方がわからなくなってもことが発覚しないだろうと考えたVampireに襲われたのだろうということだ。
「幸い、Raynil氏がこの街に来ていました。彼はヴァンパイアハンターだと名乗ったので、Raynil氏に協力を依頼したのです。彼はヴァンパイアの痕跡を追ってこの家に辿り着きました。昼頃に家へ踏み込んだところ、中でBradonが寝ていたので、退治出来たという訳です。
 幸い、Raynil氏が家に踏み込んだときBradonの奥さんは不在でした。可哀想に、自分の夫が感染していた事さえ知らなかったようです。我々は捜査を続け、Bradonが昼間に外出しているところを見た者が誰もいない事実を突き止めました。彼の目撃情報は夜に限られていたのです」
 確かに、状況証拠はそれなりにそろっているように思える。しかし……。
 ぼくはちらりと、ベッドの上のBradonの遺体に目を走らせた。

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 どうも普通の遺体に見えるんだよね。他人を襲うまでに症状が進行した吸血病感染者なら、外見に少しは感染の影響がでていそうなものなんだけど。
「私が知る限り、Bradon Lirrianは善良な市民だった。こんな事になるなんて思いもしなかった」
 Cariusは沈痛な表情になった。
「しかしヴァンパイアは人を欺く術に長けているので、納得は出来る。Raynil Dralas氏については大した物ですよ。たった一日でヴァンパイアの居所を突き止めてしまうのですから。飯の種にしているだけの事はありますね」
 納得できるのではなく、納得したいのではないのかとぼくは思った。
 Carius Runelliusは誠実な人間だ。吸血病感染者ではないかと疑いながらBradon Lirrianの死を本気で悼んでいる。そして彼が感染者だという確たる証拠はないにしても、状況証拠はBradonに極めて不利だ。この状況でRaynilの言うことを疑うことは衛兵としては考えられない事だろう。
 これは……この状況をひっくり返すのは不可能に近いような気がしてきた。
「ということは、Raynil氏が家に踏み込んだとき、貴方も……少なくとも衛兵の誰かもそれに同行されたのですね?」
 肯定の返事が返ってくることを覚悟して、ぼくは聞いた。
「いえ……実は最初に衛兵隊にこのことを訴えたのはErline Lirrian……Bradonの奥さんでした。夫が殺された、と彼女は訴えてきたのです。話を聞いた衛兵はすぐにこの家に急行し、そこでBradonの遺体とその横に立っていたRaynil氏を発見しました。つい先日Vampire捜査への協力をお願いしたばかりだったこともあり衛兵が事情を確認したところ、BradonがVampireだったことをRaynil氏が突き止めたことが判明したのです。衛兵が更に捜査をしたところ、この家の地下からも新たに首に穴の開いた物乞いの遺体が発見されました」
 ちょっと待て、話が違うぞそれは。
 その後、Bradonの奥さんのErlineにも話を聞いたが、内容はCariusから聞いたものと概ね同じだった。つまり、帰宅してみるとBradonが殺害されており、その傍らに血刀を下げたRaynilが立っていた。驚いて衛兵に夫が殺されたと訴えたが、駆けつけた衛兵は自分はヴァンパイアハンターでVampire病にかかっていたBradonを討っただけだというRaynilの主張をそのまま信じてしまったという。

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 もちろん彼女は、夫が吸血鬼であるなどというのは根も葉もないでっち上げだと主張したが、事実だけに限定すればCariusの話と食い違うものはなかった。もっとも、Cariusが状況証拠の一つとして挙げた『Bradonが日中に外出しているのを誰も見た事がない』という件については、Bradonは夜勤の仕事をしていたので昼間は寝ていただけだときっぱり否定した。
「Raynilが衛兵達に自分の嘘を信じ込ませてしまったせいですわ。彼は信用できません。一番腹立たしいのは、以前彼に会ったような気がするのに、それがいつの事か思い出せないことです。もちろん彼はここに来た事は無いし、Bradonのことも知らなかったと言っています。せめてそれがいつだったか思い出せれば、彼の主張を崩せるかもしれませんのに……。
 ……絶望的なのは分かっていますが、でも私は自分は間違っていないと思っています」
 その後、地下室の血を吸われたと見られる遺体なども見せてもらったが、CariusとErlineいずれの主張に与するにせよ、決定的な証拠といえる物は出てはこなかった。もちろん、衛兵が捜査した後なのだから当然の結果ではある。Cariusの性格からしておざなりな捜査だけでBradonを吸血鬼だと決めつけたとも思えない。少なくともこの家の中は徹底的に調べたはずだ。

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 これ以上ここに居ても得られるものはなさそうだ。CariusとErlineに暇を告げると、ぼくはBradonの家を後にした。
 
 街路を歩きながら考えをまとめようとする。衛兵がRaynilとともにこの家に乗り込んで、Bradonがヴァンパイアであることを確認して彼を討ったというのであれば事態をひっくり返すのは絶望的だ。だがRaynilが単独でBradonを殺害し、その後衛兵がBradonがヴァンパイアであったというRaynilの主張を事後承諾しただけとなれば、証拠を捏造したことによる偽装殺人の可能性も捨てきれない。衛兵達がそこまでRaynilを疑えないのは、彼がこの件の前にヴァンパイアハンターとしての身分を明かしていた事、そして何よりも衛兵隊の方からその少し前に起きていた吸血鬼事件への捜査協力を彼に依頼していた事が大きい。もちろん、Bradonの件が捏造であるならば、そもそもこの最初の吸血鬼事件から捏造は始まっている事になる。
 そんな訳でぼくが足を向けたのはJerall View Inn……Brumaの宿屋だった。事態を進展させるにはRaynilの周囲を探る以外無さそうなので、まず彼が寝泊りしている場所を確認するためだ。

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 宿の主人に聞いてみたところ、あっさりと彼がBruma東門近くに建つ宿泊も提供している安酒場、Olav's Tap and Tackに滞在していることを教えてくれた。

「こんな事を言うのもなんだが、衛兵達は間違ってるのかも知れねえ。Bradonがヴァンパイアだったなんてとても想像できねえぜ。あいつが日中に出歩いてるのを確かに見た事があるんだ。つい最近その病気にかかったってんなら話は別だが・・・あいつらは間違ってる気がする。Raynilが彼を殺したって聞いて、どう考えれば良いのか分からなかったよ。でもあんたが来てから、そう疑い始めたんだ」
 酒場の主人Olavはぼくの問いに対してそう語った。更にしばらく話をし、何とか彼の協力を取りつけようとする。

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「しかしなあ、客の秘密を他人に探らせるってのは……」
 渋るOlav。宿を提供している以上、客の信頼を裏切るような事をする訳にはいかないというのは、まあ当然の反応ではある。
「必要なもの以外には手はつけないよ。それに故意にRaynilの不利を図るようなこともしない。……何かあったらそ知らぬ顔でぼくを衛兵に引き渡してくれればいいよ。ぼくも君が手を貸してくれたことは誰にも言わないから」
「……わかった。BradonとErlineの為にそこまで言ってくれるのに知らん顔はできんしな。Raynilの部屋は階段を上って突き当たりだ」
 そういって彼は、こっそり部屋の鍵を渡してくれた。幸いまだ日は高く、酒場に客の姿は少ない。人目を引かずにすむうちにさっさと調査を片付けてしまおう。
 上に上がろうとするぼくに、Olavが小さく声をかける。
「BradonとErlineは感じの良い奴らだった。お似合いの夫婦だったよ。真相を突き止めてやってくれよ、俺もあいつがヴァンパイアだったなんて信じちゃあいねえからな」

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 Raynilが借りている部屋の中には見事なまでに何もなかった。恐らく、必要な荷物はすべてバックパックにまとめるかしていつも持ち歩くようにしているのだろう。街から街を渡り歩く身であればごく普通のことだ。実際、ぼくも似たような事をしている。所持品は可能な限り最低限に留め、Chorrolで手に入れた大型のバックパックに詰め込むようにしているのだ。
 しかしこれでは、部屋の中に手がかりなどありそうもない。探す場所が少なく、捜索の痕跡も残らないのはありがたいが、肝心の証拠が見つからなければ意味の無いことだ。備えつけの箪笥や食器棚の中も調べては見たものの、予想通り手がかりになるようなものは何も見つからない。これでお手上げか、と諦めかけた所で箪笥の後ろに何か本のようなものが落ちていることに気がついた。

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 手にとって表紙を眺めてみると、どうやらGelebourneという人物の日記のようだ。開いて、ざっと内容を改めてみる。

 Erlineの言ったことは正しかった。彼女がRaynilに見覚えがあったのも無理は無い。日記によればRaynilとBradon、そして日記の主GelebourneはAyleidの遺産を追う同じ冒険者のグループに属しており、常に共に行動していたというのだ。日記には彼ら三人があるAyleidの遺跡からついに何らかのアーティファクトを発見したこと、更なる研究によりアーティファクトの価値や能力が明らかになるまで、そのアーティファクトを洞窟に隠す事に全員が同意したこと、それをしまい込んだ箱に三つの鍵を取り付け、各々が鍵を一つずつ持つ事とした事などが詳細に記されていた。

「あんたがGelebourneの名を知っているってのも妙な話だな。Raynilが言うには、奴が最後に仕留めたヴァンパイアがそんな名前だと言ってたぞ」
 階下に降りてOlavに鍵を返す。ついでにGelebourneという名に覚えはないかと聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「ああ、そうとも。Skingradのどこかだったと思うけど。あいつはGelebourneを追跡して殺したってよ。どうもその話で衛兵達はすっかり奴の事を信用しちまった。Skingradの衛兵隊から、Raynilと奴の大偉業とやらについて聞いてたって話だからな」
 ……嫌な推測が事実になりそうだ。もちろんBradonに掛けられたヴァンパイアの嫌疑を晴らすにはその方が都合がいいわけだが、それでも……。
 それ以上の考えを封じて、ぼくはBradon宅へと向かった。

「で、何か新事実…いや…調査に進展はあったか?」
 Cariusは未だBradon宅に留まっていた。だが、彼の部下は既に引き揚げてしまっており、どうやら彼も捜査を完了して撤収する準備にかかっていたようだった。
「……まあ、多少はね。Gelebourneという名に心当たりはある?」
 ぼくがそういうとCariusは目を驚いたように見開いた。
「誰に聞いた?! なぜ君がその名を知っているんだ。ああ、職務上の機密を守れない奴が多過ぎる、全く」
 溜め息をついて天井を仰ぐ。
「Skingradの衛兵隊から報せは聞いている。少し前にRaynilがGelebourneを退治したとね。Gelebourneも同様にヴァンパイアだった、これは明らかだ」
「これを読んで見てくれないかな。話はそれからだ」
 ぼくはそう言ってGelebourneの日記をCariusに手渡した。
「先入観を持ってほしくないから内容は言わない。まずは貴方の意見がほしい」
 読み進むにつれCariusの表情にまず驚きが、次いで怒りと苦悩が浮かび上がってきた。最後まで読み終えると険しい表情で日記のページから顔を上げる。
「何と言う事だ……これで全ての謎が完全に解けた。罪も無い二人の男が殺害されたとなると、私はそのうちの一人の死について責任を負わねばなるまい……私は……私は言葉もない」

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「じゃあ、やはり貴方もそう思うのか。Raynilがアーティファクトを独占するためにかつての仲間二人にヴァンパイアの汚名を被せて殺害したのだと」
「ああ、まず間違いないだろう」
 そういってCariusは、不思議そうにぼくを見た。
「表情が暗いな。これでBradonの濡れ衣が晴らせるというのに」
「……それでもぼくは、こんな嫌な話はすべて単なる憶測であって欲しいと心のどこかで願っていたんだよ」
 溜め息と共に肩を竦める。
「我ながら度し難い性格だと思うけどね。だが……」
 二、三回頭を振って気持ちを切り替える。
「いずれにせよRaynilをこのまま見逃がすわけには行かない。そうだろう?」
「ああ、そうだな」
 Cariusは表情を引き締めた。
「衛兵隊に招集をかけよう。街中、草の根を分けてでも奴を探し出してみせる。一時間後、Orav's Tap and Tackに来てくれ。首尾はそこで話そう」
 そう言って彼はBradon宅から駆け出していった。

「すまん、奴を取り逃がした」
 Oravの店に駆け込んできたCariusは、開口一番そう言った。
「ここに付く直前に、街道の巡察兵から報告を受けた。RaynilはBrumaの西方へ向かった。巡察兵が追跡したが、山中で見失ってしまったとの事だ。奴は恐らく、件のアーティファクトを隠した洞窟に向かっている。物を手に入れて、そのまま逃亡するつもりだろう」

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 異論は無い。Cariusの認識は的確だ。だが、となると……。
「……山狩りになるね」
「ああ。だがBruma西方には洞窟がいくつもあり、日記に記載に該当しそうな候補だけでもそこそこの数になる。それに、国境の封鎖にも手を回さなければならない。アーティファクトを手に入れたら、奴はそのまま国境を超えてSkyrimあたりに逃げ込もうとするはずだ。
 ……正直に言おう、とても人手が足りん。すまないが捜索を手伝ってもらえないだろうか」
「わかった。受け持ちを教えてくれたら、すぐにでも出るよ」

 Cariusがぼくに捜索を依頼したのは、Boreal Stone Caveという洞窟だった。北門から市の外に出ると、そのまま西に向けて急ぐ。そのぼくの前を一つ、また一つと白い羽毛のような欠片が舞い落ちていった。

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「朝は晴れていたんだけどな……」
 昼前から曇り出した空から、遂に雪が降り出したのだ。
 ぼくは足を速めた。これ以上天候が悪化すると厄介なことになる。本格的な吹雪になればRaynilも洞窟に足止めされるかも知れないが、衛兵隊も捜索部隊を展開させることは不可能だ。その後で天候が回復しても、部隊を再展開し終わる前にRaynilは悠々とその隙間を抜けて逃亡してしまうだろう。
 天候は幸いにもそれ以上荒れることはなく、数刻後、雪が舞い散る中ぼくは目標の場所、Boreal Stone Caveに到着した。

 洞窟の中は暗く、入り口付近には何の気配もなかった。少し下ると開けた空間に出た。地下水が染み出してでもいるのか、膝の高さくらいまでの水に満たされている。
(凍ってはいない、な……)

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 恐る恐る足を踏み入れる。水は冷たいが、耐えられないほどではない。少し進むと、半ば水に浸された大きなチェストが目に入った。あれが例のアーティファクトを収めた物であるならば、ここが当たりだということになるが……。
 更に近づいて開錠済かどうかを確かめようとしたところで、水音が響いた。明らかに二本の足が水を掻きわけて歩く音だ。音のした方を向くと、折しも横穴から一人のDummerがこちらに歩いてくるところだった。最早身を隠す気も、こちらの不意を打つ気もないのか、歩調を変えずに悠然と歩み寄ってくる。
 Raynil Dralast……。
 そう言えばぼく自身が顔を見るのは、これが初めてだった。
 彼は数歩の間合いまで近づくと、足を止めて口を開く。

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「おめでとう。遅かれ早かれ追っ手が来るとは思っていたよ。あの日記を宿の部屋に置き忘れるだなんて俺も馬鹿なミスをしたもんだ。お前かCariusが嗅ぎ付けるのは時間の問題だったな。気にするな。お前を殺せばもうヴァンパイアハンターなどと名乗る必要もなくなるのだから」
「……ぼくの生死は関係ないと思うけどな。GelebourneとBradonを殺害すれば、あるいは事が露見すれば、いずれにせよ偽装の意味はなくなる。わざわざ話しかけてくるから何かと思えば、そんなくだらない与太話をしなければ剣も抜けないのか? つくづく見下げ果てた男だな」
 ぼくは吐き捨てた。
「でもまあ、一応言っておいてやる。素直に投降すれば手荒なことはしない。少なくともBrumaの監獄までは生命の安全は保障してやるよ」
「お前と一戦まみえて自由を手に入れるか、或いは降伏して地下牢で朽ち果てるか、二つに一つと言う訳か。……悪いが、俺は自由を手にする方を選ぶね」
「ろくでもない成算の賭けだな。大体、ぼくを倒せたとして無事に逃亡できると決まった訳でもないだろ」
 ぼくは呆れた。もっともその半分は自分に対してだ。Raynilのやったことはぼくにとってすら許しがたい非道だった。彼が降伏を拒んでくれれば公然と斬り捨てる大義名分ができる。少なくともぼくの一部は本気でそう思っている。
 にもかかわらず何故ぼくは彼を説得しようなどとしているのだろう。
「その選択肢を取るなら、声などかけずにぼくの不意を打てばよかったんだよ。足音が消せないというなら、横穴から毒矢でも打ち込めばいい。水に足を取られて動きが鈍っているこの状態なら、容易に当てられたろうに。
 一度その手を振り払った勝利の女神が、再び微笑んでくれるなどと思うなよ。ぼくに話しかけた時点で君は自ら勝利の機会を投げ捨てたんだ。最早勝ち目はない、ここを人生の終着駅にしたくなけりゃ降伏するんだね。これが最後のチャンスだ」
 ああ、そうか。
 こいつの無意味な格好付けがあまりにも気に障ったので、鼻っ柱をへし折ってやりたくなっただけか。それなら納得できるな。
 たとえその為に、こいつが降伏して生き延びるような事になったとしても。
「大体、格好をつけたいならこんなところでぼくなんかを相手に長口舌を振るうより、Brumaの法廷で自分の言いたいことを主張すればいいんだよ。いままでのお粗末な内容じゃ望みは薄いが、少しは刑が軽くなりかも知れないしね」
「……話は終わりだ」
 Raynilは憮然として背負った大剣を抜きはなった。
「俺かお前か、どちらか一人だけがここから出られると言う訳だ……地獄で会おう」
「ふざけるな……」
 食いしばった歯の間からぼくは言葉を絞り出した。Raynilの科白に、突如強烈な怒気が湧き上がってきたのだ。同じく剣を抜き放ち、ぼくは吹き上がる怒りを言葉に変え、そのままRaynilに叩きつけた。
「……誰が貴様と同じ地獄になど落ちるか。図に乗るなよ、Raynil Dralast。他人の物を掠め取るしか能がなく、空々しい長口舌で格好をつけなければ悪人にもなれないような貴様ごとき小人が、ぼくと同じ地獄に落ちることができるなどと思いあがるな!!」
「な……!!」
 Raynilは驚愕した。あまりの暴言に一瞬動きが止まる。だが、自分でも予想できなかった怒りと、意図していなかった言葉に驚いていたのはぼくも同じだった。
 だから、反応が遅れた。
 この隙を突けばRaynilの剣を叩き落せていたかもしれないぼくの剣尖は、その軌道を変える間もなくRaynilの心臓を貫いていた。

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「彼が死んだことがせめてもの慰めですわ。こんなことを言うのは本当は恐ろしいことかも知れないけれど……貴方ならわかってくれるでしょう?」
 Brumaに戻り、ErlineにRaynilの死を告げると、彼女は哀しそうに微笑んだ。
 ぼくは懐を探り、Boreal Stone Caveで見つけたものを取り出す。
「一つ渡すものがあるんだ。……今となっては多分貴女が持っているのが一番正しいと思う」
 かつてBradonとGelebourne、そしてRaynilが数多の危険をくぐり、謎を解き明かして手に入れたアミュレット。だがいかなる時の経過の作用か、薄汚れ、輝きを失ったそれは最早いささかも価値があるようなものには見えなかった。
 これが三人の、かつて共に夢を追った男達の人生の終着駅だと思うと、やりきれないものがある。
 Erlineはしばらく手渡されたアミュレットをじっと見つめていたが、ややあって何かを決心したように顔を上げた。
「昔、私はBradonと約束しました。これからお見せする事を決して誰にも話さないと。ですがあなたは、夫の非業の死に報いてくれました。Bradonもその誓いを破る事を許してくれるでしょう……」
「つまり……」
 ぼくは慎重に、言葉を口に上らせる。
「そのアミュレットにはまだ秘密がある、と?」
「ええ。このアミュレットには、強力な目くらましの魔法が付呪されています。それによって本来の力と姿を隠してあるのです。ですが、ある言葉を唱えれば目くらましは破れ、アミュレットは本来の力と姿とを取り戻します。夫は万が一の事態に備えてその言葉を私に残してくれました。夫が死に、アミュレットを受け継いだ私までもが死の床につくようなことになったら、そのときは後の二人に教えるように、と」
 そしてErlineは、封印を解く一言を静かに呟いた。

『盟友』

 真の宝は、この封印解除の鍵の一言だったのかもしれないな。ふとそんなことを思った。
 Bradonには、アミュレットを独り占めする意志は無かった。だがRaynilには、彼を信じることができなかった。
 しかし彼ら三人は、かつては紛れも無く友であったのだ。さもなければ悪名高いAyleidの遺跡の罠を突破できるはずも無い。それが一体、どこで道を誤ってしまったのだろう。共に追っていたはずの夢を、彼らはどこで見失ってしまったのだろうか……。
「アミュレットは元に戻りました。かつて見た時の様に美しくよみがえりました。でももう私には必要の無いものです。だから……あなたに持っておいて頂きたいの。Bradonもきっとそう思ってるに違いありません」
 Erlineはそう言って、アミュレットをぼくに手渡した。
「あなたに感謝を。いかなる旅路の苦難からも、このアミュレットはあなたを守ってくれることでしょう」



〈熱病でもなく、衰弱でもない、それは
 寝台か決闘の草地の上の
 明晰な休息だ。

 情欲ではなく、不能でもない、それは
 友だ。
 友よ。

 拷問ではなく、刑吏でもない、それは
 恋人だ。
 恋人よ。〉

 街並みは既に闇に沈んでいた。Erlineの家を辞し、その闇の底を同じように沈んだ心を抱えて歩く内に、ぼくは我知らず脳裏に浮かんだ詩句をそのまま口ずさんでいた。
「それは?」
 少し歩いたところで、探す前にCariusに行き会った。
「古い……うたさ」
 自分がいつ、どこでこの詩を知ったのか思い出せぬまま、ぼくは答える。
「とても、古い……」
「そうか」
「Raynilなら、死んだよ」
 Boreal Stone Caveでのいきさつを、簡単に話す。

11-18.jpg

「君は成すべき事をしたんだ。奴の死に責任を感じることは無い。君が責を感じるなら、その罪はむしろ私にある」
「……君のせいじゃないさ」
 あの状況で、衛兵が義務を果たしただけのヴァンパイアハンターに殺人の嫌疑をかける訳にはいかない。
「過去には戻れないし、済んでしまった事をやり直す事は出来ないが、君のおかげで正義は護られたと思う。Bradonの魂は安らかに眠るだろう。それからGelebourneの事だが、Skingradに使者を立てて、彼の名をヴァンパイアの記録簿から除外するよう手配したよ。Bradonと同様、彼の汚名も当然晴らされるべきだからね……」
 成すべきことをしたのはCarius、むしろ君の方だと思うな。ぼくのやったことは、結局死人を増やしただけだ。
 彼に礼を言って、そこで別れた。メイジギルドへの、大して長くも無い道をたどりながら、詩句の続きを口に上らせる。

〈求めたわけではない大気とそして世界だ。
 生命よ。

 ──つまり、こんなことだったのか?

 ──そして、夢は冷える〉

 かつて、三人の男達が追い求めた夢。だが、今ぼくの手の中で静かに輝くアミュレットからは、もうそれを感じ取ることはできなかった。
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ng

URL | [ 編集 ] 2009/03/20(金) 02:23:18

文章が丁寧でとても読み易いですね!
伏線に興味をそそられて、殆ど毎日来させて貰っています。

応援するつもりが、何だか急かすようなコメントになってしまってすみません^^;

あまね

URL | [ 編集 ] 2009/03/21(土) 09:17:57

ng様

 はじめまして。応援ありがとうございます!

>応援するつもりが、何だか急かすようなコメントになってしまってすみません^^;

 いえ、お気になさらず(^^;;
 こちらこそ不定期な上なかなか更新もできず申し訳ないです。これを励みに少しでも更新ペースを上げられるようがんばります。
 それでは。

nek-12

URL | [ 編集 ] 2009/04/07(火) 01:26:05

うむー気になる・・・
SS中の字幕ですが、fontは何を使ってらっしゃいますか?
雰囲気出てていいですね。

MS-Gothicではやはりしっくりこないので色々試してるんですが、なかなか納得いかないのですよー(とりあえず「しねきゃぷしょん」使ってますけど)。

あまね

URL | [ 編集 ] 2009/04/09(木) 23:54:01

 こんにちは、nek-12さん。いつも翻訳所では大変お世話になってます。

 字幕のフォントは半角がフリーフォントのKingthings Petrock、全角が『筆王』についてきたTT-JTC古印体を使ってます。賀状ソフトはフォントがたくさんついてくるので、いろいろ選べて楽しいですよ(使い方完全に間違ってますが(笑))。

ゆみなが

URL | [ 編集 ] 2009/04/22(水) 23:22:32

ご無沙汰しております。Burumaの単発クエストには後味の悪いのが多いですが、相変わらず、見事なほどマイルドに締めくくってますね。

Cariusが、まさかこんなにイイヤツだったなんて。私の日記ではただの小役人だったのですが…。

日本語Modの翻訳を見る限りでは、解釈はあまねさんの方が正しそうです。私自身リプレイ日記書いておきながら何ですが、大変新鮮でした。

これからもご自分のペースで、連載がんばってください。次回を楽しみにしております。

あまね

URL | [ 編集 ] 2009/04/30(木) 01:43:43

 ゆみなが様こんにちは。返事が遅くなって申し訳ありません。
 Carius君の性格の解釈は基本的に日本語化MODの訳から受けた印象そのままで、あんまり触ってなかったりします。小役人・小悪党タイプならTyrelliusがいますし。ただこれだと、ちょっとGarrusとキャラがかぶるような気がしないでもありません(苦笑)。
 ただ、Raynil追撃の時にプレイヤーだけに後を追わせようとするのはいくらゲーム上の都合とはいえあまりに不自然なので、さすがに会話を改変してます。実はこの辺り、結構ゆみなが様の日記も参考にさせていただいてたりします。
 私個人としては、Jeanne Frasoricがあんな性格になってしまった事の方が自分でも謎だったりしますが(笑)。

 それでは、更新ペースが遅くて申し訳ありませんが、よければまたお越し下さい。











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