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嘘と沈黙

カテゴリー: プレイ日記

 プレイ日記です。以下のクエストのネタバレが含まれています。

・Two Sides Of The Coin



「ねえ、Llewellyn。もしこの後すぐにBrumaを発ってしまうのでなければ、ひとつお願いがあるんだけど」
 J'skarの一件を片付けた後そのままギルドに泊めてもらった翌朝、ぼくはJeanneにそう声をかけられた。
「内容によるけど……またVolanaroとJ'skarが何か馬鹿やったんじゃないよね?」
「ううん、違うわ。友達が困っているので助けてあげてほしいの」
 そう言ってJeanneが話してくれたのは、概ねこんな内容だった。
 ArnoraとJorundrというとても幸せな恋人達がいた。ところがある日、どんな心変わりが彼に起きたのかJorundrはArnoraの金を奪いとりBrumaから逃げ出そうとした。彼は衛兵に捕らえられたが、捕まった時既に金は持っておらず、Arnoraは全財産を失ってしまったのだという。

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「あなたなら彼女の力になれないかと思って……お願いしていい?」

「あんた誰? いったい私に何の用なの?」

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 Jeanneに教えられた家を訪ねたぼくを、件のArnoraは思い切り仏頂面で出迎えた。
 ……何か話に聞いていたのとはイメージが違うな。少なくとも恋人に一方的に裏切られるようなタイプには見えない。むしろ彼女自身が目的の為なら少々の裏切りや荒事も辞さないような雰囲気を漂わせている。
「Jorundrの為に困った立場に追い込まれているって聞いたんでね。力になれないかと思って来てみたんだ」
「あれは私達の問題よ。あなたには関係ないわ。それに、見ず知らずのあなたに昔の恋人の話なんかすると思う?」
「それならそれでいいさ。Jeanneに君を助けてほしいと頼まれたんだけど、気にいらないようなら帰るよ」
「Jeanne? Jeanneって……メイジギルド支部長のJeanne Frasoric?」
 Arnoraは少し考え込む様子を見せた。
「彼女の紹介なら信用してもよさそうね。他人を騙そうなんて考えもしないような甘……まあ、何にせよあたしの盗まれた金を取り戻すのを手伝ってくれるならいくらか分け前をあげるわ」
 ずいぶんときな臭い話になってきたような気がする。大体、今Jeanneのことを何て言おうとした?
「どんな話を聞いたか大体想像はつくわ。Jorundrの事や衛兵から背負い込んだ借金……でも、その全部が真実というわけじゃない。あたしを助けてくれるあんたみたいな人を呼び寄せる為に一つ二つ事実を流しはしたけどね。でもあたしに力を貸すと確約してくれるまではこれ以上は話せない。あんたにとってもでっかい儲け話になることは約束できるけど……乗るかい? それとも降りるかい?」
 正直なところ、降りられるものならここで降りたいところだ。『毒を食らわば皿まで』とは俗に言うところだけど、皿まで食らう事になると最初からわかっていて、わざわざ毒入りの食べ物に手を出すのは願い下げにしたい。
 ただ問題は……ここで退いたら当分はJeanneに顔向けできなくなるってことなんだよね。
「わかった、乗るよ」
 はなはだ不本意だけど。
 こうしてぼくは、わざわざ泥沼に足を突っ込む破目になった。

「Jorundrと私はよく言ってもすわりの悪い不安定な関係だったわ。私は嫌だったけど、彼の軽い犯罪に手を貸して、Cyrodiil中を引っ張りまわされた」
 そう言ってArnoraは事の仔細を話し始めた。
 彼女と、その恋人Jorundrは盗賊だった。とはいえ、最初は生活していくために必要な小さな仕事をするだけに留め、ささやかながらも巧くやっていたという。だが昨年頃から、Jorundrは次第に危険を伴う大きな仕事に手を出すようになり、それがどんどんエスカレートするに至って彼女は内心ついていけなくなっていった。しかし、恋人とはいえ粗暴な男であるJorundrには逆らえず、彼女はその手伝いを続けざるを得なかったのだという。

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「何度も止めようとしたけれど、彼は私を殴ったり蹴ったりするだけで私の言うことなんて聞こうともしなかった。お金が彼を変えてしまったのよ。本当にそう思う。七年前に会った彼とは別人だもの」
「……それでぼくに何をしろと。まさか彼を元に戻してくれなんて言わないよね」
 Arnoraは一瞬、意表をつかれたような表情になって言葉を切った。
 まだそう言われた方が気が楽ではある。だが、わざわざ第三者を引き入れようというArnoraの目的がそんな感傷的なものであるはずが無いのは十分にわかっていた。こうしてこちらの同情を引いておいて、何かろくでもない難題を押しつけるつもりなんだろう。
「それができるものなら……でも、到底無理な話よね。……彼ではなくあたしの方が」
 彼女は呟き、内心を測ろうとするかのようにぼくを見つめた。
「……最後の獲物は、帝都に送られる税の輸送隊だった。私達はそれを襲ったんだけど、乱戦の中で彼が衛兵の一人を殺してしまった。後悔したわ。私達はお金を強奪すると山に隠れた。彼は私に、誰かに衛兵殺しの事を言うなら殺すって言って、私は怖くて彼の言いなりになるしかなかった。二日後に、Brumaの衛兵隊が私達に追いついたの。私は食料を調達に行っていたのだけど、その間にJorundrは捕まってしまって……でもその時にはもうお金は無くなっていた。彼が私を裏切って、他の場所に隠したのよ」
 Arnoraは再び口を開き、話を続けた。
「……Bruma城の地下牢に行って彼と話して。お金がどこにあるのか聞き出して。そしたら二人でそれを山分けしましょう」
 やっぱり……そんなことだろうとは思ったんだ。盗品の横領に手を出す破目になるなんて。
 Jeanne……少しは友達を選ぼうよ。

 気がすすまないままBruma城を訪ね、看守役の衛兵にJorundrへの面会を申し込んだところ、手短に済ませるならという条件であっさり許可された。噂のJorundrは多くのNord男の例に漏れず長身で筋骨隆々とした体躯の持ち主で、その肉体を見せつけるように筋肉の盛り上がった上半身を誇示している。

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 Leyawiinあたりならまだしも、まともな暖房も無い酷寒のBrumaの地下牢で上半身裸というのは勘弁してほしい。
 いったいどうやって話を持ちかけたものかと悩みながら口を開こうとしたが、その前にJorundrの方からぼくに話しかけてきた。
「お前が誰かは知らんがそんなことはどうでもいい。とっとと失せな、話すことは何も無い」
 いきなり取りつく島もない剣幕で、けんもほろろに罵しられた。
「おおかたよそ者のあんた相手になら俺が何か口を滑らせるんじゃないかってんで、衛兵どもに送り込まれたんだろう。無駄だ、帰ってあの嗅ぎまわり屋のTyrelliusの野郎に伝えな。うまくいかなかったってな」
 こりゃ駄目だ。到底まともな話なんてできそうに無い。
 ぼくは一度、地下牢から退散することにした。その前にあることを牢番の衛兵に確認してみる。
 ……やはり予想通りか。

 Arnoraの協力者であることを悟られてはいけないのは当然だが、Jorundrとまともに話をするにはその前にまずぼくが衛兵、なかんずくJorundrが名前を出したTyrelliusの仲間ではないことを彼に信じさせる必要がある。もちろんぼくは元々衛兵たちの協力者ではない訳だが、にもかかわらずJorundrがそう信じ込んだからには、なにかそう信じるだけの理由があるはずだ。
 そして、ArnoraがTyrelliusの事を話さなかった事にもまた……。
 考え込みながら歩いているうちに、いつしかギルドの前も通り過ぎて街の西門まで来てしまっていた。
 ここまで来てしまったのなら、考えを整理するために少し外を散歩するのもいいかもしれないな。ついでだから馬も少し歩かせてやるか……。

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 そう考えたぼくは、そのまま街門をくぐりWildeye Stablesに向かった。預けておいたMaborel次長のまだら馬にまたがる。
 と、いきなり街門警備の衛兵が血相を変えてこちらに走ってきた。何事だ一体、山賊か狼でも出たか?
「そこまでだ、この犯罪者め! 罰金を支払えるだけの持ち合わせが無いようだな。おとなしく監獄で刑に服するがいい!!」
 ……え?!
「ちょっと待て! 罪状は何だよ?!」
 剣の柄に手をかけ、今にもぼくに斬りかかりそうな様子の衛兵に向けて、ぼくは慌てて抗議する。
「しらばっくれるつもりか?! この馬泥棒めが!!」
「冗談じゃない。何で自分の馬に乗って逮捕されなきゃいけないんだよ?!」
 衛兵は一瞬口をつぐんだ。拳を握り、立てた親指だけで無言で横を指差してみせる。
「君の馬はあっちだ。それは厩舎が世話してる売り物」
 …………。
「……あのさ、だったら間違っただけだってのもわかるだろ」
 のろのろと最後の抗弁を試みるぼくに、衛兵はにやりと笑って見せた。
「すまんな、法は法だ。まあ勘違いなのは明らかだし長くても二日程度で出てこれるだろう。あきらめろ」
 なんてことだ。
 ……まあでも、これでJorundrを信用させることはできるかな。彼から見える独房に放り込まれれば、だが。

 などと考えていたが、他の独房が清掃中だとかで衛兵たちはよりによってぼくをJorundrと同じ独房に放り込んだ。男女を同じ房に入れるなんてどういうつもりだよ。傷物にでもされたら末代まで呪ってやる。
 そこまでで非建設的な思考を打ち切り、せめてこの状況をすこしでも有利な方向に生かそうとJorundrに話しかけようとしたところで、独房の外をこちらに向けて歩いてくる足音が響いた。足音はすぐに止まり、その主が鉄格子になった扉の外に姿を現す。鎖帷子の上にBrumaの猛禽の紋章が入った黄色いキルト地のサーコート……この街の衛兵だ。
「相変わらずだな、Jorundr。失うものは何もないって訳か。だったらさっさと吐くべき事を吐いて、俺とお前とをこの厄介ごとから救ってほしいものだな」
「ふん、そうだな。俺がしゃべらなきゃお前はここから離れられない。そして俺がくたばるまでここで過ごさなきゃならないって訳だな。いい気味だ」
 小さく押し殺した衛兵の声に対して、Jorundrはあたりを憚らぬ大声で言い返す。

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「ここで腐って人生終えるつもりか、馬鹿が。吐きさえすれば他の道もあるかもしれないものを」
「知るか、馬鹿野郎。おれは金輪際衛兵なんざ信じるつもりは無い。てめえと取引するくらいなら、Oblivionに落とされたほうがマシだ。わかったか、Tyrellius」
 ……やはり彼がTyrelliusか。
「……好きにしろ。せいぜい休暇を楽しむんだな」
 吐き捨てたまま、Tyrelliusの足音が去っていく。それが聞こえなくなったところで、Jorundrはようやくこちらを向いた。

「よお、あんたか。衛兵達にぶち込まれたってことはどうやら奴らのお仲間ではなさそうだな」
 この前とは打って変わって、気さくに話しかけてくる。本当に典型的なNord男だな。異性相手だととたんに馴れ馴れしくなる。にしてもその格好だけは何とかしてほしいんだけど。
「俺は衛兵殺しの罪で捕まって、ここで長期休暇中だ。たとえやって無くてもな。一度領主が判決を下せば、それが覆ることはない」
「あのさ、話をする前にせめて上に何か一枚着てくれないか? 大体その格好で寒くない訳?」
「俺はNordだ」
「……いや、いい。わかった」
 聞いたぼくが馬鹿だった。
「御先祖様と同じく、俺も魔女に身ぐるみ剥がれちまったと言う訳さ。あの冷血非情なArnoraにな。それで俺はここにぶち込まれ、Arnoraは俺の家でのうのうと暮らしてやがる」
 そう言ってJorundrは話し始める。
 彼の話は、出だしはArnoraが話してくれたものと同じだった。Cyrodiilのあちこちを巡りながら他人のものをかすめ盗って生活していたが、衛兵が捜査に乗り出すほどのものには手を出さなかったという。
「だがある時、Arnoraの奴がでかいヤマを持ってきた。帝都に運び込まれる税の輸送隊を待ち伏せるってものだ。すげぇ金を手に入れる気だった。完全武装してな。あの女に正気の沙汰じゃねぇって言ったんだが、あいつは一切意見を曲げなかった。女ってのは、男にしてほしいことをさせる力があるのさ。だから俺たちはそれをやった。税の輸送隊を襲撃したんだ」
「……要するに彼女の前でいい格好をしたかったんだろ」
 ぼくの一言に、Jorundrは一瞬怒りに表情を強張らせた。だがすぐに自嘲と諦念がそれに取って代わる。
「……確かにな。馬鹿なことをしたと思ってるよ。何にせよ襲撃の途中で、Arnoraは衛兵の一人を殺っちまった。奴らは殴りつけるだけにしろって前々から言ってたんだが、あいつは聞きやしなかった。その後俺たちは林に金を埋めて隠した」
「…………」
 ぼくは無言でJorundrに先を促す。
「Arnoraが食料を取りに姿を消した少し後だった。突然キャンプをBrumaの衛兵達が襲撃してきた。あいつが垂れ込んだのさ。それ以外何が考えられる? だが、俺の方が一歩早かった。あいつがキャンプを離れているうちに、戦利品を動かしといたのさ。ははは! ざまぁみろ。これが俺の最後の報復って訳だ」
「……それで? それをぼくに話してどうさせたい訳?」
 一つ、話が決定的に矛盾している個所には敢えて目をつぶって、ぼくは聞いた。

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「俺の望みはArnoraが死ぬ事だ。そうだ、死だ。あの女が俺の人生を奪ったんだ、今度は俺があいつの人生を奪ってやる」
 ぼくはJorundrに聞こえないように小さな溜め息をついた。
 すでに十分すぎるほどお互いの人生を奪い合ってると思うけどな、君たち二人は。Arnoraにしても、無くなった金に執着し、そのことだけを考えて日々を送るのでは到底幸せな人生とは言えないような気がする。もちろん、牢に入っていないだけでも遥かにましだと言われればそれまでだが。
「もしお前が、俺の代わりにあいつをやってくれるなら金をやる。全部だ。どうせあんたもあの女にいろいろ吹き込まれて、いいようにのせられたクチだろう。代わりといっては何だが殺した証拠が欲しい。それはあの女がいつも身につけている糞ったれのアミュレットがいい。俺にそれを見せてくれたら金はあんたの物だ」
 いるか、そんなもの。
「……家宝の戦鎚なり戦斧なりは取り返さなくてもいいのかな」
 かすかに皮肉を込めてそう言うと、ふとJorundrの目が遠くなった。
「わかってくれてるんだな、あんた。だがそれはいいんだ。Whiterunを逃れるときにその手のものは全部なくしちまった。家宝も、家族も、御先祖様につながる物は何もかも、な。俺にはもう何も残されてない……」
 ……Whiterunの難民だったのか、彼は。

 二日後の午前中に、ぼくは釈放された。

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 Arnoraの家に向かって歩きながら、ぼくは二人の言い分の相違について考えていた。
 二人の話は、大筋で一致しながらも核心のところで言っていることが正反対になっている。つまり、どちらかは嘘をついていることになる。本当の事を言ってるのはどちらなのか。そこまで考えてぼくは皮肉っぽく口元をゆがめた。考えるまでも無く答えはもう出ている。

 二人とも嘘をついている。

 Jorundrは間違いなく、衛兵がキャンプを襲う前にArnoraが彼を裏切るであろう事を知っていた。さもなければ事前に奪った金を移動させるはずが無い。おそらく金を隠した後、Arnoraに裏切られる前にさっさと行方をくらますつもりだったのだろう。一方、ArnoraがJorundrを裏切り、衛兵にキャンプの位置を通報したのもまず間違いは無い。結局彼らは二人とも、最初から相手を裏切るつもりだった。そしてお互いの思惑が破綻した後は、輸送隊襲撃と衛兵殺害の責を相手に負わせようとしている。
 まったく、ろくでもない話に首を突っ込んでしまったものだ。
 ちょうどメイジギルドの前を通りかかったので、立ち寄っていくことにした。ギルドに預けておいた装備一式を、万一荒っぽい展開になったときのために引き取っておく。街中を完全武装してうろつくのも何なので、街に着いたときにチェストに放り込んでしまっていたのだ。更にSelenaに一つ呪文を教えてもらうことにした。
「あら、Llewellyn」
 いつも通りに受付に出ていたJeanneが声をかけてくる。
「昨日は一日見なかったけど、どうしてたの?」
 君のせいで投獄されていたよ、とはさすがに言いかねた。
「……片付いたら話すよ」
「そう、がんばってね」
 そう言ってにっこりと微笑みかけてくる。いったいどこまで事情をわかってくれているんだか。
 ……もしかしたら、一番の魔女は彼女かもしれない。

 Arnoraの家の扉を開けると、彼女の姿は無かった。とはいえ、家を空けている様子でもない。どういうことかと首をひねっていると、いきなり地下の方から雷鳴が轟いた。
 ……下?!

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 階下に降りると、Arnoraは一心不乱に標的に雷撃魔法を叩き込んでいた。いったい家の中で何をやってるんだか。
「おつとめご苦労様。あの馬鹿と牢を共にするなんてね。で、お金のありかはわかったかい?」
 ぼくの顔を見た彼女は、げらげら笑いながらそう言った。あまりそういう態度はよくないと思うんだけどね、余計な敵を増やすことになるよ。
 ぼくに他人のことが言えるかどうかはともかくとして。
「で、あいつはあんたにとんだ与太話をしたわけね。まさか信じちゃいないと思うけど。で、彼はあんたに何をしろって言ったの? 私を殺せとでも?」
 なぜ知ってる。いや、大体想像はつくけど。
「……概ね君の予想通りだよ」
「やっぱりね、あいつの考えそうなことだわ。何か他の手はないものかしらねえ。あいつが私が死んだと思い込むような物は。あいつはどんな証拠を欲しがってたんだい?」
「君のアミュレットだよ」
 そう言った瞬間、それまで人を馬鹿にしたような薄笑いを浮かべていたArnoraの表情が怒りに歪んだ。
「これをもってこいですって? あいつだって、これが私の家族が遺した唯一の家宝だと知っているのに。あの男、どこまで下劣なの」
「……そりゃ、君が簡単に手放すようなものなら証拠にならないからだろ」
 やる気の無い声で返したぼくの科白に、Arnoraは落ち着きを取り戻す。
「そうね、確かに。で、あんたはどうしたい訳? 私だって、ここであんたと戦っても、殺されるだけだって事くらいはわかる」
 嘘をつけ、負ける気無いだろ。そこまで殺る気満々で殺気をみなぎらせて何を言ってるんだか。
「だけどあんたにアミュレットを渡したとしたらどうかしら? あんたがあいつにそれを見せれば、金をどこに隠したかあいつははしゃべるはずよね。あんただって、ここで私を殺しておたずね者になる事は望ましくないはず。さあ選んで頂戴。私をとるか、Jorundrをとるかを」
「……君の策に乗るよ」
 どうせ最初から皿どころかテーブルまでかじる事になるのはわかってたんだ。
「あんたが賢い選択をするのはわかってたわ」

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 そう言ってArnoraはにんまりと笑う。
 悪いけど、この一件については賢い選択なんて最初から一つもなかったと思うよ。ぼくにできるのは、複数の愚かな選択から少しでもましな選択をすることだけだ。
 いや、違うな。むしろより愚かな選択を選び続けているという方が正しい気がする。
「この鍵で私のベッドの脇にあるチェストを開ければ、その中にJorundrが欲しがってるアミュレットがあるわ。それを彼に見せて、お金を取ってくるのよ。半分は私のためにここに持ってきて。もし帰ってこなかったら、衛兵たちが計画に加わることになるわね。そしてあんたはCyrodiil中を追われることになる。そうなりたくはないわよね? それじゃ、幸運を祈るわ」
「……はいはい。じゃあもう一回城まで行ってくるよ」
 そういってチェストを開け、取り出したアミュレットを懐にしまいこみながらぼくは何気ない風を装ってたずねた。
「ところで、Tyrelliusって誰?」
「……さあ、知らない名だね」
 幸運が必要なのは君の方だよ。どう考えてもやっていることが綱渡りに過ぎる。
 ぼくはArnoraに気づかれないように嘆息した。
 Jorundrを逮捕した衛兵の名を、君が知らないはずがない。

「それで、彼女は死んだのか? ははは、そうか! とうとう! とうとう! 誰かがあの女のむかつくにやけ面をこの世から取り除いてくれたって訳だ! よしよし!!」

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 アミュレットを見たJorundrは狂喜した。
 ……確かに、彼女の笑い顔を見てると腹が立ってくるって事には同意するけどさ。仮にも元恋人が死んだってのに、踊りださんばかりに喜ぶってのはどうかと思うんだ。
「今度は俺の番だな。金はBrumaの城壁の外に埋めてある。北門を出たすぐのところだ」
 馬鹿、声が大きい……!!
 ぎょっとなって彼を制止しようとしたが、Arnoraの死に浮かれる彼はぼくの必死の身振りに気づこうともしなかった。
 まずい。まずすぎる、これは。Jorundrは気づいていないが、下手をすると彼の不注意は本当にArnoraに死をもたらしかねない。まあ、そうなったらかえって彼には願ったりかなったりかもしれないが。
 きびすを返して駆け出したぼくの背を、Jorundrの最後の言葉が追いかけてきた。
「あばよ、もう会うこともないだろうがな。俺がお前さんならあいつの死体が見つかる前にさっさとBrumaを逃げ出すだろうしな。ま、お前さんが下手を打って捕まりでもすりゃ、また同じ牢にぶちこまれるかも知らんが」

 城門を駆け抜け、そのまま足を緩めずにArnoraの家に向けて全力で駆ける。
 あのJorundrの大声では、金の隠し場所は間違いなくぼくだけではなく『もう一人』にも聞かれただろう。彼が先に金を確保に動けばいいが、もしも先に不安要素を排除しようとしたなら……。

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 もう間に合わないかもしれない。膨れ上がる不安に背を押されるように、ぼくは更に足を速めた。

「……Arnora?!」
「何よ、血相変えて。お金はちゃんと手に入れたんだろうね」

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 蹴破らんばかりの勢いで家の扉を開けたぼくを、Arnoraは相変わらずの仏頂面で迎える。その不機嫌な顔を見た瞬間、ぼくは安堵のあまりその場にへたり込みそうになった。
「…よ……かっ…た。ぼく…は、また……間に…あわないかと……」
 絞り出した言葉に、奇妙な違和感を感じる。
 一体何が、またなんだろう。
「…………!!」
 そう思った瞬間、焼けた金串を脳に突き刺されたかの様な痛みが、脳天から全身を貫いて走った。咄嗟に椅子の背をつかみ、崩れ落ちそうになる身体を支える。声にならない苦鳴が食いしばった歯の間から漏れているのがわかるが、それもどこか遠い世界の事の様だ。視野が昏み、世界が崩れ去るような感覚が押し寄せる中で、椅子を掴んだ手に一層強く力を込め、ぼくは何とか息を整えようとした。しばらくしてようやく、まともにしゃべれるようになる。
「それで、金はどうしたのよ」
「場所は聞いてきたよ。後は掘り出すだけ」
「じゃあ、ぐずぐずしてないでさっさと行ってきたらどうなの」
「何を言ってる。君も来るんだよ」
 再びぼくを家から追い出そうとするArnoraに向けて、ぼくはそう言った。
「……あたしは遠慮するよ」
「それでぼくがお金を持ち逃げしたらどうする気なんだ?」
「それはないよ。あんたを信用してるもの」
 ぼくは額に手を当てて、天を仰いだ。
「本気で言っているとは考えたくないし、冗談だとしても笑えないよ、それ」
 Arnoraは苦笑した。それはこの一件に関わってからぼくが見る、初めての真実の表情かも知れない。
 だがその表情は、ぼくが更に続けた言葉によって凍りつく。
「……それに言っておくけど、このままここに留まったらおそらく君の生命はないよ」
「どういうこと?」
 ぼくはただ一言言葉を返した。
「Tyrellius」
 沈黙が落ちた。

「……一体どこまで知ってるんだい」
 ややあってArnoraがあきらめたように口を開いた。
「証拠があるわけじゃないしね、実際にはほとんど何もわかってない。だからこれからぼくが言うのは単なる推測だ。もっとも君がシラを切り通したとしても、ぼくは自分の想像が現実からそう遠くないとは思っているけど。そもそも事の起こりとなった輸送隊襲撃の計画を持ってきたのはTyrelliusだったんだろう?」
 Arnoraは答えない。
「衛兵として、税金の輸送計画や護衛の数を知ることができる立場にあったTyrelliusは、それを利用して襲撃を企てた。情報を、前から目をつけていた利用できそうなフリーの盗賊である君達に流して、輸送隊を襲わせようとしたんだ。彼が君とJorundrの両方に話を持ちかけたのか、君だけを抱き込もうとしたのかまではぼくにはわからない。何にせよ、君はそれに乗った。その時既にJorundrを見限っていた君は、Tyrelliusと組んでJorundrを陥れ、罪を彼に被せた上で奪った金品はTyrelliusと二人で独占しようとした。
 だが、それを察知したJorundrは、先に奪った金品を隠し場所から移動させてしまった。本当はそのまま逃亡して君とTyrelliusを出し抜き、後から金を回収するつもりだったんだろうけど、そこまでは果たせずに捕らえられてしまった。そのまま一年がたち、君もTyrelliusも金の隠し場所をJorundrから聞き出せずにいる間に、今度は君とTyrelliusの間に亀裂が生じてきた。そこで君はTyrelliusをも見限り、新しい相棒を探す事にしたんだ。新たな相棒が金の隠し場所を突き止めてそこにおもむけば、それを察知したTyrelliusと衝突する。相棒がTyrelliusを倒せば、自分は表に出ずに彼を排除することができる、と君は考えた。
 君がぼくにTyrelliusを排除させようとしているのはわかってた。ぼくが彼を倒せばそれでよし、逆に彼がぼくを殺せば、何食わぬ顔をして今まで通り彼と組み続けるつもりだったんだろう? でもぼくが彼なら、先に君を排除する道を選ぶ。既にぼくを始末したような顔をしてね。君はぼくの死を確認するまでは態度を決定するわけには行かない。そこを突けば不意を打つのは容易いだろう」
「……あたしにそれを認めろと?」
「別に。好きにすればいいさ。……さてと、ぼくの言っていることが理解できたならお金を回収しに行くよ。中身は元から期待していないけど、ぼくと君が二人でいるのを見れば、Tyrelliusも諦めて手を引いてくれるかもしれない……さすがにこちらは望み薄だけど」
「あたしがあんたとJorundrを嵌めようとしたと確信して、なおあたしを助けようって言うの?」
 Arnoraは二、三回首を振ると、疑り深そうな目つきでぼくを見る。
「理解できないね。いや、それ以上に信用できない」
「Jeanneは君を助けてくれといったからね。君は確かにろくでなしだけど、だからと言ってぼくに君を斬る権利がある訳じゃない。ましてTyrelliusの剣に君を引き渡すのが正しいことだとも思えない」
 Arnoraは呆れた様に目を剥いた。ぼくは表情を変えない。
 それを見て彼女は、諦めたように同行を承諾した。

「最後に一つだけ、確認していい?」
 家を出たところで、Arnoraがぼくの背に問いかける。
「このまま金の隠し場所に向かって、Tyrelliusに会ったとして……そこであたしがあんたよりもTyrelliusを選んで、あんたを背中から刺そうとするかも知れないとは思わないの?」
「やってみる?」
 ぼくは振り返らずに、小さく肩だけ竦めてArnoraに答えた。
「……無理だと思うけど」
 表情を見られたくなかったので振り返らなかったけれど、Arnoraは小さく息を呑んでそのまま絶句した。

 日は既に西空に傾き、地平線に近づこうとしていた。次第に赤みを増す光の中を、Brumaの北門をくぐり、Jorundrが示した場所へ向けて歩いていく。程なく予想していた通り、正面から全身を鎖帷子で包んだ一人の男が歩いてきた。今日はBruma市衛兵の身分を示すサーコートは身に着けていない。

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「金につられてノコノコ出てきたか。お前が余計な事をしてくれたおかげでArnoraを始末し損なったかと思ったが、ここでお前達を二人とも片付ければ帳尻は合うわけだ。まあ、Jorundrの口を割らせてくれた事にだけは礼を言っ……」
「都合のいい妄想を垂れ流すのはその辺にして、とっとと失せろ」
 Tyrelliusの長口舌を遮って、ぼくは言った。
「今なら見逃してやる。まだぼくも中身を見たわけじゃないが、多分Jorundrの隠し金には生命をかけるほどの価値はないよ」
「はあ?!」
 Tyrelliusは馬鹿にしたような表情でぼくを見た。
「本気で俺がそんな条件を呑むと思ってるんじゃないだろうな」
「さすがにそれは思わない。……呑んだほうが君の身のためだとは思うけどね。どうしても納得がいかないなら、箱を開けるまで停戦にしないか。中身を見れば、君も諦めがつくだろう?」
「思い上がったものだな。二対一なら俺に勝てるとでも思ったか」
「残念ながら……」
 ぼくはそう言って、Tyrelliusとの会話の始まりから密かに準備していた呪文……今日、Selenaに教えてもらったものだ……の力を解き放った。
「三対一なんだ」
 空間が震え、巨大な影がぼくのやや前方に現れる。
「最後の警告だ。逃げるなら……」
 言い終える前に、Tyrelliusは抜剣してぼくに斬りかかってきた。……召喚者であるぼくを倒せば、後はArnora一人を相手にすればすむとでも思ったのかもしれないが、それはあまりにも無謀と言うものだ。

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 Arnoraの放った電撃が彼を撃つ。一瞬、動きが鈍ったところにDaedrothの一撃が炸裂すると、Tyrelliusはあっけなく吹きとび、そのまま動かなくなった。

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 少し先の岩場に、半ば地面に埋もれる様にしてJorundrが隠したチェストがあった。その中身は……。
 真鍮の指輪、青銅のネックレス、そしてSeptim金貨が40枚。
「こんなことだろうと思ったよ。誰かが先に掘り出してしまっていたのか、君がもう使ってしまっていたのかは聞かないとして……」
 ぼくは溜め息をついてArnoraに言った。
「聞くのも馬鹿馬鹿しいけど、本当にこれを二人で分ける?」
「あんたの科白じゃないけど、好きにすればいいわ」
 ぼくは肩を竦めた。どうにもやりきれない気持ちで傍らに転がるTyrelliusに問いかける。
「……今更聞くようなことじゃないけど、こんな物に生命を賭けて本当に君はそれで本望だったのか?」
 返事はなかった。
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pela

URL | [ 編集 ] 2008/11/25(火) 20:29:47

こんばんは!
楽しく読ませていただきました。

私はアルノラが殺されるパターンしか知らなかったのですが、ジョランダーから宝の在り処を訊いた後、アルノラの元へ走れば、間に合うという分岐が…? あまねさんの創作なのでしょうか?

いずれにしても、アルノラとジョランダーの刹那的な性格に対する描写がアイロニックではあるものの、暖かい眼差しによって彩られていて、心地よかったです。

それでは、またお邪魔します!

あまね

URL | [ 編集 ] 2008/11/26(水) 21:33:46

 pela様、こんばんは。楽しめていただけた様で何よりです。

 Arnoraの件ですが、彼女と組んでJorundrを騙す事を選んだ場合、Arnoraの死亡イベントが起きるのは実はTyrelliusを倒した瞬間です。なので、Jorundrから金の在り処を聞いた後、そのまま金を取りに行かずにArnoraの家に戻れば彼女はちゃんと生きていますし、CSRを使って一緒に金を取りに行くこともできます(OBSE版のCSRを使っている場合は、金の在り処を聞いた後Arnoraと会話すると『さっさと金を取りに行け』というばかりで通常の会話メニューが出なくなりますので、Jorundrのところに行く前に彼女をコンパニオン化して、Wait Hereで待っていてもらう必要があります)。
 ただし、普通にこれをやるとTyrelliusを倒した瞬間にそれまで目の前にいたArnoraが突如消滅し、かわりにArnoraの家に死体役の別人、ArnoraCorpse(Arnoraの死体)さんが忽然と出現することに……(苦笑)。さすがにそれはあまりにも不条理なので、クエストスクリプトを一ヶ所書き換えてArnoraの死亡イベントを無効にしてしまいました。そこまでしてこの女を助ける必要が本当にあるのかと思わないでもなかったですが(苦笑)。

 それでは。

ゆみなが

URL | [ 編集 ] 2008/11/28(金) 22:48:16

こんな分岐存在したのか、と驚きましたが、そう言う事情がありましたか。なかなか巧い改変だと思います。

まあ、シナリオを改変してまで助ける価値があるのか、と言う点は、私も同感ではありますが(笑)、一度公式シナリオを完遂した身としては、こういう予想外は新鮮で楽しいものです。

個人的にはこれからもじゃんじゃんやっちゃって欲しいモノですね。

あまね

URL | [ 編集 ] 2008/12/01(月) 00:47:44

 ゆみなが様こんばんは。
 シナリオ改変MODはTESNにもいくつか上がっていますし、使えそうなものは使っていく予定です。MODクエストも本編内に組み込めそうなものは組み込んでみようかな、などといろいろ考えてはいますが、MODを組み込みだすとプレイがなかなか進まないのが困りものですね(苦笑)。
 それでは、これからもよろしくお願いします。

retma

URL | [ 編集 ] 2008/12/07(日) 21:35:53

はじめまして、
困っていた際に情報をいただいて
大変嬉しかったです。
とりあえず真っ先にお礼を思いまして
お邪魔させていただきました。
どうもありがとうございますv
これからはromるばかりの身から
少々昇格させていただくつもりです。
どうぞこれからも宜しくお願いします。

自分はかならずイイコな答えを用意している日本製RPGしか
知らなかった身なのでOBLIVIONをやってこの手のエピソードに
ケリを付けるのに躊躇しまくってアサシンギルドやシーフギルドにも
入れない惰弱なやつですがあまねさんのゲーム内でのスタンスが
とても好きで安心して読んでます。どうぞこれからもがんばって下さい

あまね

URL | [ 編集 ] 2008/12/09(火) 23:20:17

 retma様こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
 シーフギルドは殺人厳禁なので(ある程度盗みを働かないとクエストが進まない点を別にすれば)意外と平和なんじゃないかとも思いますが、Dark Brotherhoodは掛け値なしにえげつないですよねえ……。まあ、そもそもBethesda Soft社自体が聞いた話によると『ハートフルなシナリオが大嫌い』な会社らしいんですが(苦笑)。
 実のところうちの娘も到底善人とはいえない性格の持ち主ではあるんですが(Arnoraの裏切りを封じるためにわざわざDaedrothの召喚を有り金はたいて買うようなやつですし)、これからもretma様の御期待に沿えるようにがんばります(^^;;

 リンクまで張っていただきありがとうございました。こちらからもリンクさせていただきますね。
 それでは。











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