海へ出るつもりじゃなかった

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 プレイ日記です。以下のクエストのネタバレが含まれています。

・An Unexpected Voyage




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 街にたどり着いたのは、既に真夜中を回ったときだった。もちろん商店などとっくの昔に閉まっている。手持ちの大して多くもない品を処分して路銀の一部なりとも作りたい所だったが、それは朝まで諦めざるを得ないようだ。

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 門を守る衛兵に宿の場所を教えてもらい、一番近くの宿に向かう。Merchanter's Innという名前そのままの商人宿だ。宿泊料は20Septimだという。……所持金78Septimの身にはきつすぎる値段だな。食事のことなども考えると2日ですっからかんになってしまう。
 既に深夜というより早暁といっていい時間になっていたこともあり、今夜は宿泊を諦め朝を待つことにした。……せめて食事だけは取らせてもらおう。

 一息ついた後、探索がてら夜の街中をぶらついて回る。二区画を回ったところで夜も明けてきたので、店が開いた頃合いを見計らって商業地区に戻り、必要なものだけを手元に残して手持ちの武器や薬、ゴブリンから奪った傷物の宝石などを売り払うと多少はまとまった金が手に入った。とはいえ、JauffreがいるというWeynon修道院へ向かうための路銀としてはまだぎりぎりだし、何よりも今のぼくにはJauffreと会った後の生活の当てがまったくない。もう少し街中を回って、今後の見通しをつけておきたいところだ。

 Elven Garden地区、Talos地区、寺院地区と順番に廻り、最後にWaterFront地区に来たのはもう午後も遅くなってのことだった。しばらく周囲を見て回るうちに日が落ちてくる。秋の日はつるべ落とし。暗くなってしまう前に今日はここで宿を確保した方がよさそうだ。そういえば衛兵が、この辺りに安い宿があると言っていた事を覚えている。もっとも、『あまりお勧めしない』とも言われていたが……手持ちの金を考えるとこちらとしても背に腹は代えられない。

 目的の宿を見つけるのには少々時間を要した。なんと、地上に建てられた建物ではなく船を改造した水上酒場だったのだ。

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 中に入ると、Altmerの主人とOrcの用心棒、そして談笑する何人もの客が眼に入った。結構繁盛しているようだ。果たしてベッドが空いているか不安になったので早速主人……Ormilと名乗った……を捕まえて確認してみたが、彼らのほとんどは食事のためにここに来ており、ベッドはまだ空いているとのことだった。宿泊料も10Septimと昨夜の商人宿の半額だったので、まずベッドを予約させてもらってから食事を取ることにした。出された食事は、値段のことも考えるとなかなか美味で量も十分、これなら酒場の繁盛ぶりも納得できる。ここは結構当たりだったかも知れない。
 ……このときは本当にそう思っていたのだ。

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 食事がてら、居合わせた客達と会話して回る。

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 鎖帷子を着込んだ戦士風の彼は、Matthias Draconis。Ayleid遺物のコレクターである大富豪、Umbacanoなる人物のボディガードを務めているそうだ。珍しいAyleid遺物があれば買い取ってくれるし、仕事の依頼ももらえるかもしれないとの事だったが……当分は縁のなさそうな話だ。もう少し名と腕が上がってから考えさせてほしいというと、自分が言うのもなんだがいつでも来てくれていいと言ってくれた。

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 ゴタゴタした安酒場の雰囲気にはいささか不似合いな、白銀に輝く衛兵鎧もまばゆい彼はHieronymus Lex。帝都衛兵隊長の一人で、主にWaterFront地区の治安維持を担当している。巡回時間の都合上、夕食にここを利用することになったが、料理が気に入って常連客になっているとの事だ。

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 年の頃ならぼくと同じかやや年上に見えるBosmerの彼女はMethredhel。一旗上げるためについ最近帝都に出てきたのだという。ぼくがこれからの生活の当てがなくて困っていると話したところ、戦士ギルドがメンバーを募集していると教えてくれた。

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 もっとも、彼女自身には何か別の当てがあるようだったが……。

 気がつけばMethredhelと、Lex隊長の3人とで随分盛り上がってしまっていた。既に夜も更け、他の客はとっくの昔に帰ってしまっている。いいかげん酔いも回ってきたので、借りていた客室に転げ込むことにした。

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 ……いや、まあわかってはいたんだ。一泊10Septimだし、場所からして船底の船倉内だしね。ちゃんとベッドとテーブルがあるだけでも、安宿としてはまだマシな部屋かもしれない(それが全くの事実であることを知るのにそう長い時間はかからなかった)。ここ数日まともに寝ていないこともあって、ぼくは早々にベッドにもぐりこんで眠りについた。

 ふと目が醒めた。感覚的にはまだ真夜中を少し回ったころだ。朝まで眠るつもりだったんだけどな……。損をしたような気持ちになりながら、船の心地よい揺れと船腹に寄せる波の音を子守唄代わりに、もう一度眠りに身を委ねようとしたところでようやく気が付いた。何でこの船出港してるんだよ。
 ギョッとなって飛び起きると、隣で身を起こしたMethredhelと目が合った。やはり不安そうな表情をしている。

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「出港してる……よね」
「ええ。……何が起きてるのかしら」
 二人で顔を突き合わせて悩んでいても仕方がない。できるだけ音を立てないように船室の扉を開け、外に忍び出たところで、いきなりどこかヌボーっとした顔の若いNordの男と顔を突き合わせる羽目になった。

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「おい! おめぇどこのOblivionから湧いて出た? Blackwater Brigandsの人間には見えねえぞ!」
 Blackwater Brigands……。ええと、つまりそいつらにこの船が乗っ取られたって事か?
「……只の客だよ」
「何ぃ? オラは船には二人しか乗ってないって聞いたべ。用心棒の奴は倉庫に押し込めて、彼女が船長を押さえる。で、あんたが残ってる。ああ、もっかい聞くべ。おめぇ誰だ?」
 頭痛くなってきた。要するにあのOrcを倉庫に閉じ込めた後、客室をチェックしなかったのかこいつは。まあ、チェックされてたらこっちがたまらないが、にしてもねぇ……。
「賊の仲間だよ」
 ……とはいえここまで間抜けだとうまく騙されてくれるかも知れないし、駄目もとで試してみるか。
「仲間はオラたち4人の他はいねえべ。Blackwater Brigandsがいきなり新しい奴を入れるなんてありえねぇ。3ヶ月前にBrigandsを結成したとき、儲けはこの4人以外では分けねぇって決めたべ。嘘つくのは止めて、ここで何やってるか言いねぇ!」
 賊は4人、リーダーは女性でそいつはオーナーのOrmil氏を押さえてると。その他色々、よくここまでしゃべってくれたもんだ。どうせならこのまま騙されてここを通してくれたらいいんだけど……さすがに無理か。
「もう言う事はないよ」
「だったらこの剣でおめぇの口を割らせてもらうことになるなぁ!」
 そういうと、剣を抜き放って斬りかかろうとしたが、その瞬間彼の肩口に短剣が突き立った。ぼくの背後で扉の陰に潜んでいたMethredhelが放ったのだ。よろめいたところに踏み込んで剣を振り下ろすと勝負はあっさりとついた。

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「何だ今の物音は! 何が起きた?!」
 同時に大きな音がして、ぼくらが泊まっていた船室の隣の部屋から大きな人影が飛び出してきた。驚愕とともに振り向いた視線の先にいたのは……。

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 Lex隊長、あなたも降り損ねたクチですか……。

 倒したNordの賊Lynchの持ち物を探ると、倉庫の鍵とメモを持っていた。

『Lynchへ。お前への指示は、船底のデッキに侵入してそこの部屋を全て制圧することだ。Minxの邪魔をしないこと。彼女は一人で自分の仕事を片付けられる。船を沈めたら、3日後にBravilで落ち合う事を忘れるな。内容を憶えたら、このメモを確実に破棄すること S 』

 ……突っ込まない、突っ込まないぞ。
「こいつ、この内容を憶え……?!@☆!!!」
 空気を読まずに口を開きかけたLex隊長の足を、ぼくはブーツの踵で思い切り踏んづけて黙らせた。抗議の視線で睨みつけてくる彼に向かって、黙って首を振って見せる。
 ……口に出してしまったら負けだよ、隊長。

 通路の突き当たりの倉庫の扉を、内側から激しく叩く音がする。そういえば用心棒を閉じ込めたって言ってたっけ。
 Lynchから奪った鍵で扉を開けると、予想通りOrcの用心棒兼操舵手、Graman gro-Marad氏が閉じ込められていた。やれやれ、これで後は彼に任せれば港に帰れそう……。
「貴方様が上甲板を制圧してくだされば、私が舵を取れます」
 ……はい?
「私はこのような危険には慣れておりませんので」
 ……君は用心棒じゃなかったっけ。
「私は酔っぱらいの田舎者の扱いには慣れておりますが、武装した賊はちょっと……」
 ……勘弁してくれ。
 確かに操舵手でもある彼に、死なないまでも大怪我でもされたら、港に戻るにも大きな支障が出る。こちらにはMethredhelに加えLex隊長までいるし、相手は分散しているようだから一人ずつ制圧していけば船を奪還するのはそれほど難しくはないかも知れないが……客に何てことさせるんだよ。
「Guardとしてはこの状況は捨て置けん。無理しなくても私が片付けてもいいぞ」
 了解、隊長。敵の気を引くのはこちらでやるから、斬った張ったはよろしく。

 が、結局結論から言うと……。

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 Lex隊長どころか、Methredhelの出番すらなかった。よくまあこんな腕で乗っ取りなんて計画したものだ。
 舵輪を押さえていたWrathというNordの賊を倒すと、Graman氏が操舵甲板に上がってきた。ちなみに、Wrathによると彼らの目的はGolden Galleonと呼ばれる財宝らしい。しかしまあ……。

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 360度どちらを見渡しても見事に海。暗くてはっきりと見えないが、水平線まで島影の一つもない様子。一体どこまで船を出してくれたんだ。
「危険はなくなったようですので、私は舵輪を受け持つといたしましょう。ですがOrmil様の安全が確保されるまでは、この船を1インチたりとも動かしはいたしません」
 ……やれやれ。

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「アンタは誰? どうやってここに忍び込んだのよ」
 Wrathから奪った鍵で扉を開けて船長室に入ると、予想通りImperialの女性と顔をつきあわせることになった。
「Wrathから鍵を手に入れたからだよ」
 彼女がSeleneか。……月の女神なんてコードネームをつけているのに、ポッチャリ型だとは思っていなかった。うーん、やっぱり名前負けしてない?
「Wrathがだって? 奴には舵輪を守って、誰とも話すなと言っておいたのに。アンタ誰よ?」
「仲間だよ」
 バレバレの嘘もいいとこだけど……何故かこの連中、こう言うと聞かれてもいないことまでべらべらとしゃべってくれるんだよね。
「ハ! アタシ達は誰も紛れ込まないように鉄の掟を結んだ。ちゃんとそれを憶いださせるぞ。その約定を結んだのは……」
 Selene……君も期待に違わないか。
「三ヶ月前だっけ?」
「何てこと、秘密を守れる盗賊はいないのかしら? じゃあ我々が何故Bloated Floatを乗っ取ったのかもお見通しって訳?」
「Golden Galleonを手に入れるためだろう?」
「ど、どどどどうやってそのことを知ったのよ?! いいわ、アンタを始末したら、船に穴を開けて隠れ家に向かうもの。誰にもバレやしないわ」
「Bravilだよね、その隠れ家があるのって」
「ま、また? そこまでアンタがアタシらの計画を知っていたなんて。Lynchは全部の客室を調べなかったのね。アンタは下の部屋に隠れていてここまで上がって来たのね。どうやってLynchとMinxとWrathの眼を逃れてきたのよ?」
「……彼らの眼を逃れることはできなかったんだ。おかげで随分血なまぐさい展開になってしまったのは確かだね。……彼らを殺したい訳じゃなかった。残念だよ」
「そんな馬鹿な! あなた一人で三人を倒したっていうの?」
「いや、まあLex隊長もいたけど」
 いたけど、手を出す必要もなかったとはさすがに言いかねた。
「Lexですって? う、嘘でしょう?!」
 うん、やはり彼の名の威力は絶大。
「隊長?」
「やあ、善良な市民よ。何か私に手伝えることはないか?」

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 ぼくの呼びかけに応え、のっそりとキャビンに現れる人影一つ。
「紹介するよ、隊長。彼女はSelene。この乗っ取り事件の主犯格らしいんだけど、どうやら逮捕に抵抗……」
「しません! 降伏します! 今します! すぐします!!」
 Seleneが悲鳴のように叫んだ。剣を腰から外すと、鞘ごとこちらに放ってよこす。
「そうか、それは残念だ」
 Lex隊長は小さく落胆のため息をついた。なお諦めきれない表情でSeleneを見遣る。
「なあ、今からでも気を変えるつもりはないか? 何もせずに捕まるなんてつまらないだろう」
「……!!!」
 Seleneは声も出ない。表情を引き攣らせたまま真っ青になってがたがたと震えている。
「隊長、女の子をそこまでいじめるものじゃないよ」
 さすがに気の毒になって助け舟を出す。Seleneはすがるような目つきでぼくを見つめ……。
「ちょっと、その剣は何なのよ?!」
 ぼくが彼女に突きつけた剣尖に動きを阻まれた。
「いや、君がぼくに縋りつこうとしているように見えたから……」
「それはその通りだけど、どうして」
「……万一、背後から短剣でも突きつけられると困るからね」
「…………」
 Seleneは憤然として、足音も高くキャビンを出て行った。そのまま船倉まで降りていくと、自分から船室の扉を明けて中に入る。そして叩きつけるようにして扉を閉じてしまった。
「怒らせちゃったかなぁ」
 彼女が閉じこもった船室に外から施錠し、ついでに扉の前に棚までおいてから、ぼくはLex隊長に向かって口を開いた。
「隊長が彼女を脅しすぎるから……」
「待て、私の所為か?!」
 まあ確かに、ぼくのやり口も誉められたものじゃなかったかもしれない。でもそれで、一人だけでも流血を避けられたんだからいいじゃないか。
「……言っちゃ何だけど『今からでも気を変えるつもりはないか?』っていう、あれは完全に本気に聞こえたよ」
「本気だったんだが、何か問題があるのか?」
 前言撤回。やっぱりこいつが悪い。

 降伏したSeleneを客室に閉じこめた後、事の原因をOrmil氏から聞いたのだが、はっきり言って呆れるしかなかった。この宿Bloated Floatはかつてあまり繁盛しておらず、そこで客寄せのために前の所有者がこの船のどこかに『Golden Galleon』なる黄金像を隠したという伝説をでっち上げたというのだ。後は言わずもがな。Ormil氏は客に被害が出なくてよかったと胸をなでおろしていたが……ぼくやMethredhelも客だっての。Lex隊長は、とりあえずこの話は聞かなかったことにしてくれた。

 Imperial Cityに戻れたのは翌朝だった。到着早々に衛兵達がSeleneを連行していく。何でも彼女には他にも余罪があり賞金がかけられていたとのことで、ぼくとMethredhelがその賞金を受け取れることになった。これら一切を手配してくれたLex隊長は、事が片付いた後で手を挙げながら悠々と去っていった。遠目にもまばゆい日の光を浴びて白銀に輝く鎧が、岸壁の上を遠ざかっていく。
「結構いい男だったかも」
 とはMethredhelの弁。あんなのが好みな訳?
「あんたは違うの?」
「まあ結構男前なのは認めるけど、ちょっと顔が濃すぎるよね」
「……あんたね、その言いにくいことをはっきりと口にする癖直さないと、そのうち友達無くすわよ」
 Methredhelが呆れた。

廻りはじめる世界

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 プレイ日記です。Tutorialのネタバレが含まれています。




 ……覚えていない夢から目覚めると、やはりそこは、監獄の独房だった。

 ぼくはルウェリン。
 帝都監獄への収監の憂き目に遭ったのは19の時の事だ。

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 普通ならやや気取って『その日を境にすべてが変わってしまった』などと書くところだが、残念ながらそういうわけにはいかない。それ以前のぼくが何者だったか、何をしていたのか、そして何故監獄などに入れられる破目になったのか、ぼく自身がまったく覚えていないからだ。気がつけばぼくは薄暗い独房にいて、そして向かいの牢のDunmerがぼくを罵っていた。

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『おまえはここで死ぬんだよ、Breton。死ぬんだ!! ほら、ガードたちが来たぜ、お前の為によぉ、ヒェーヘヘヘ!!』

 それと共に慌しい物音が近づいてくる。数人の、おそらくは武装した足音だ。

(……残念ながら外れだと思うよ、名も知らないDunmerのお兄さん(いや、おじさんかな?) 普通、囚人を連行に来る看守はあんな足音は立てない。あれはまるで……)

 何かに追われているようだ。となると、それはそれで状況は到底楽観できそうにない。とはいえこちらは独房から出られない以上、事態の推移を見守る以外ないのだが。
 時をおかず、数人の人影が独房前の通路へと階段を下ってきた。三人の完全武装した兵士と、彼らに護衛された身なりのよい老人だ。彼らは……まっすぐにぼくの独房を目指して歩いてきて、ぼくを見て驚きのあまり目を丸くした。
「なんだ、この囚人は? この独房は使用禁止だと言っておいたはずだろう」
 きびきびした女性の声が、不審そうにもう一人の兵士を詰問する。どうやら彼女が指揮官で、後の二人がその部下のようだ。
「看守の手違いかと、私は……」
「構いません。その扉を開けるのです」
 そういって彼女は、正面からぼくの眼を射抜く。
「後ろに下がれ、囚人よ。おかしな動きをすれば容赦なく斬り殺す」
 ……。
 ぼくは素直に、壁際まで下がった。彼らは独房の中に踏み込んできて、そして……老人がぼくの顔に眼を止めた。
「お前には、見覚えがある……。そう、夢の中で遭った事が」
 ぼくは、彼の話を聞くことにした。何が起きているのか、少しでも情報がほしい。
 ……判明した事態はかなり気の滅入るものだった。彼、Uriel Septim七世はこの帝国の皇帝であり、暗殺者の襲撃を受けてここまで逃れてきたのだという。彼の息子達も同時に襲撃され、おそらくは全員殺害されたとのことだ。ぼくはよりにもよって、独房に偽装した皇族の緊急脱出用の通路の入口に拘禁されていたのだ。
 指揮官の女性……Captain Renaultという名らしい……が壁の隠しスイッチを操作すると、石壁が開いて通路が現れた。

 脱出する皇帝陛下一行の後を、やや距離をおいて追いかけたが、兵士達はぼくを咎めなかった。やや大胆な気持ちになり、ぼくは彼らを追い抜いて先頭に立った。彼らの気が変わらないうちに、こんな所からはさっさと脱出したい。
 と、いきなり通路脇の隠し扉から人影が飛び出してきた。

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 一瞬護衛の仲間か、とも思ったが隠しようもない殺気がそれを否定している。暗殺者……ということは、この通路のことも彼らに完全にばれていて、先回りされているとしか考えようがない。どうやら事態は、既に最悪をすら通り越していると思った方がよさそうだ。
 などと考えているうちに、走ってきた彼らはぼくを完全に無視して、皇帝とその一行に襲い掛かろうとした。ぼくは黙って彼らをやり過ごす……。

 ふりをして、一人の顔面に思い切り拳を叩き込んだ。
 よろめいたそいつを、護衛の一人が一刀に斬り捨てる。戦闘は短く、暗殺者達は全員骸になって転がったが、皇帝側もRenault隊長が生命を落としていた。

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 ……また、なのか?
 心の中のどこかで声がする。

 一瞬の自失から醒めると、BaurusというRedguardの兵士がもう一人に指示を下していた。ここからは彼が代わって指揮を取るらしい。そしてぼくは、ここで同行を拒否された。

 ここまでついてこさせて、それはないだろう?!

 思わず抗議するものの受け入れられず、彼らは閉ざされた扉の先に消えた。途方にくれていると異音が響いて通路脇の壁が崩れ、そこから巨大な鼠二匹が襲い掛かってきた。
 ……なんとか鼠を倒し、新たに開いた穴を覗き込む。どうやらここから先に進むしかなさそうだ。
 ぼくはRenault隊長の遺体から刀を、暗殺者達からはポーションを借用すると、横穴に足を踏み入れた。

 横穴の先は予想通り鼠の巣になっていた。しかも脱獄に失敗した者のなれの果てかアンデッド化した死体までいる有様。彼らを蹴散らしながら進むと、こんな光景に出くわした。

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 ……この先はゴブリンの巣窟か。
 正面からやり合っていたら生命がいくつあっても足りないので、あるいは弓矢を打ち込み、あるいは背後から斬り捨てて

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 ……ひたすらに先を急いだ。なんとか彼らの居住区域を突破したと思ったところで、別の通路につながる穴を発見した。
 様子を伺うと、皇帝一行の姿があった。そして、彼らに襲い掛かる暗殺者の姿も。

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 ぼくが姿をあらわして彼らへと歩み寄ると、護衛の兵士達が剣を抜いた。が、皇帝は今度も兵士達を制してくれた。先を固める兵士達に代わり、Baurusから渡されたたいまつで通路を照らしながらぼくがUriel陛下(と呼ばせてもらってもいいだろう、ここまでくれば)の脇を固めて先を目指す。その先も襲撃は続き、ぼくどころか陛下自らが剣を振るって暗殺者達を撃退する有様の中、彼は時間を惜しむように神々と運命についてぼくに語りかけた。彼の運命はここで尽き、その先をぼくが切り開かなくてはならない、といった内容だったと思う。

 ……ぼくは嫌だ。そんな超越的な力で人の運命を捻じ曲げる存在など大嫌いだ。
 また心の中で声がする。
 そして思った。彼を死なせてたまるか、と。それは決して皇帝に対する忠誠などではなかったし、それどころか、彼に積極的に生きていてほしかったわけでもない。もとより、そんな感情を抱くほど相手の事を知っていた訳ですらなかった。
 ただ、ぼくは。

 運命に負けたくなかったのだ。

 したり顔で人に気紛れに幸福や生命を与え、あるいはまたあっさりと奪い去る。この無慈悲で傲慢で残酷な世界にただ我慢がならなかった。こいつらに一泡吹かせることができるなら、ぼくは魂ですら喜んで差し出しただろう。神々も運命も地獄に墜ちるがいい。

 そして。

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 ぼくは結局、彼を守れなかった。

 もとより守れるような力もなかっただけの話だが。

 彼は、身に付けていた“王者の護符”をぼくに託して逝った。その護符をWeynon修道院のJauffreに渡し、彼の最後の息子を見つけ出し、そしてoblivionの顎を閉じよ、と。

 一人生き残ったBaurusによれば、Jauffreは彼の所属する親衛隊、Bladesの総長とのことだ。彼もまた、ぼくに皇帝の遺言を果たしてくれという。

「貴方はどうするの」
「皇帝の遺体を守って、お前を追う者がいないか確認する。Talosのご加護があらんことを」
「わかった。御武運を……」

 彼に別れを告げ、もらった鍵で扉を開いてぼくは通路の先を目指す。そして、帝都の湖岸に開いた下水道の排水口から、遂に外に出た。

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 外は、夜更けであった。
 泣きやんだ後のように白い輪を持った月が、ぼくを見下ろしている。それはぼくの心を映す鏡のようで……。

『初めて外に出たとき、彼女は月を見上げる』

 誰かが歌っているのが、聞こえたような気がした。
 
『照らす満月は、心を映す鏡のよう
 やさしく抱きしめるは、あまたの光なす希望』

 静かに波の打ち寄せる湖の岸辺で

 誰も知るまいと、ぼくは白い月をほほに浴びて
 無理に微笑んでみたのだ。
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